伝統芸能の中でも能は、とっつきにくくハードルが高く感じられるようです。
まして能楽堂に出向くのは気おくれしてしまう人も多いかと思います。
むかしのことばで話すので理解しにくく高尚(こうしょう)なイメージがあるのは否定できません。
でもそんなことはないんです。
ハマる人はハマるのが、「能」なんですよ!
この記事では、能に親しんで10数年のわたしが、能の魅力を徹底解剖してわかりやすくお伝えします。
能の魅力を簡単にひとことでいうと
能の魅力をひとことでいうと、哀しみの中に希望を見つける、生きる力を見出すことだと思います。
どういうことかというと、能に登場する人物(この世のものではない霊や神も含めて)は、心の葛藤(かっとう)や悩みを抱えています。
哀しみを背負って生きています。
霊だから正確には死んでいるのですが、あの世で生きています。
そんなあの世のものたちの声に耳を傾け、哀しみを共有することで、哀しみの中に一筋の生きる希望を見ることができます。
生きている間にもっとこうすればよかった、ああすればよかった、登場人物の後悔にも似た生への執着を見せつけられるとき
見るものにとって逆説的に生への希望を感じる瞬間が訪れます。
それこそが能の魅力だと、わたしは考えています。
能の型とは?
能は型を使って演じられます。
まず、ワキ(脇役)が現れ、場所と自分の身分を語ります。
ワキは多くの場合、旅をする僧侶(そうりょ)の設定です。
そこにシテ(主役)が現れ、普通の人ではないと気づいたワキがシテにたずねると
シテは、実は私は幽霊だと明かします。
第二幕で能面をつけてシテ(主役)が再び現れ、生前の恨み(うらみ)を語ります。
語り尽くしたあとは、舞台を右に左に前に後ろにと、舞います。
思いを晴らして幕引きとなります。
能の楽しみ方に決まりはあるの?
能の見方、楽しみ方に決まりはありません。
楽しみ方は自由です。
例えば、わたしは物語がよくわからないときは、衣装(正しくは装束しょうぞくといいます)を見るのを楽しみにしていました。
もちろん今でも、装束(しょうぞく)は能を見るときの楽しみです。
能面をかけた主役は豪華な装束をまとっていますから、目に華やか、楽しませてくれます。
あと、冠(かんむり)などをかぶっている場合もあり、小物を見るのも楽しみ方のひとつです。
シテの舞も見ものです。
笛・太鼓の演奏隊に合わせて、リズミカルに舞うさまに、うっとり〜しますよ
能の基礎知識をさらっと予習
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能はこんなに魅力的!
何度も能楽堂へ通ううちに見えてきた能の魅力をお伝えします。
能舞台には、この世とあの世をつなぐ時空がぽっかりと開いています。
能を見る時間はわたしにとって、心を浄化させる時間です。
時空を超えた時間旅行
能の魅力のひとつ、それは時空を超えた時間旅行
まるで異次元にいざなわれる時間旅行のようです。
能の謡(コーラス)には、ゆらぎのリズムがあり、非常に気持ちよくなります。
眠くなります。
現実と時空を超えた場所とを行ったり来たりしている感覚になります。
ゆらぎに身をまかせて、いつしか意識はあちらの世界へ。
現実と夢うつつの世界、覚醒(かくせい)と夢とを繰り返しす心地よさは、日常では得られない身体感覚です。
能が描く、生と死、現世とあの世
心地よい眠りがあの世へと通じているようで、死が怖くなくなる。
そんなふうにさえ感じます。
能を見ることで死を考えるようになるから逆に、生きるとは何か、正しく生きるために何をするか
哲学的なことを考えたりもしてしまいます。
あとからじわじわくる
能の魅力とは、あとからじわじわ効く薬のような効果もあります。
たとえるなら、即効性のある市販薬ではなく、体質改善を目指す漢方薬のようなものですね!
時間旅行を楽しんで、家に帰って日常に戻ってから、心の底にふとあのときの景色が浮かんでくる。
すべてがわかりやすくできていないから逆に、考える余地があります。
答えはその場でわかりません。
宿題をもらって帰るようなものです。
自分なりのものの見方や意味を見つけ出したくなるのです。
見えないものが見える
能は想像力で見る演劇です。
通常の演劇のように、舞台には大道具や舞台装置は基本、ありません。
あっても、持ち運びのできる小道具くらい(小道具のことを能では「つくりもの」といいます)
なので、見る側の想像力次第では、見えないものが見えることもあるのです。
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能の魅力は、人の心によりそい、喜怒哀楽をともにすること
能は日本の昔の物語をベースにしています。
「源氏物語」や「伊勢物語」など、日本の古典から題材をとったストーリーが多くあります。
これら古典には、時が流れても今も変わることのない愛や恋、恨み、憎しみや愛憎劇がつまっています。
人間の喜怒哀楽を能というかたちで追体験することは、人の気持ちによりそうことです。
「隅田川」のように我が子を亡くした母親がなげき悲しむ悲劇では、一緒になって悲しむ
母親の気持ちに寄り添う。
能は、心を育む演劇です。
慈悲のこころ、いつくしむ心、あわれだと思う心、
この世で報われなかった人に、悲しかったでしょう、くやしかったでしょう
そんなひとさじのやさしさを向けてあげることで、人は救われます。
能はシテ(能面をかけている主役)の立場で語られることが多いのですが、
ご紹介する本はワキ(主役の伴奏者:脇役)の立場で語られる良書です↓
能の見方に奥行きが広がります。お手にとって読んでいただけるとうれしいです↓
能の面白さがわからない、つまらない!そんなときは
能はある程度の年齢になると、自分の人生経験も投影(とうえい)させて楽しめるようになります。
若い頃には気づかなかった人生の機微や奥行きが、能を通して再発見できるようになるのです。
まるで、人生を重ねた重みと経験が、能の世界観とリンクするかのように。
能に少しでも興味があるなら、頭で考えずに一度、能楽堂(能舞台)で見てみることを強くおすすめします。
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最近ではテレビでもよく放映されるようになりましたが、能楽堂の空間で全身で能を感じるのが能を知る早道です。
少しでも興味があればぜひ、能楽堂に足を運ばれることをおすすめします。
初めは、ストーリーや意味なんかわからなくても大丈夫。
むしろわからないのがふつうです。
わかろうとするからわからないのです。
目や耳で、肌で五感を総動員して空気感を感じることで、能がどんなものかぼんやりと知ることができるでしょう。
コツは、空間に身を任せて「感じること」です。
世の中には簡単に理解できるものと、簡単にはわからないものがあります。
能は、簡単にはわからない部類のものです。
わたしも今でもわかっていないことがたくさんあります。
能は見るのではなく感じるものです。
美しい、悲しい、くやしい、あわれ、など能を見ることで多くの感情が内側からわきあがってきます。
感情の変化を楽しみながら、衣装や能面、雰囲気を味わうだけでも価値があります。
心に響くシーンやがあれば、なぜ心を動かされたのか考えてみるのもよいでしょう。
知識なんかなくて大丈夫!気軽に、一度見てみてください。
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最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!