能舞台の松竹梅|梅はどこにある?老松と若竹の秘密・意味トリビアが興味深い!

能舞台といえば大きく描かれた松の絵が印象的ですが、実は竹も梅もあるのです!

この記事では能舞台の松竹梅についてお伝えします。

能舞台の松の意味

能舞台を正面からみると奥の板に松の絵が描かれています。

松の絵は能舞台のシンボルでもあります。

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一年中緑の葉を茂らせる松は古来より、長寿のシンボルとされてきました。

樹齢を重ねた松を「老松(おいまつ)」といい、珍重され大切に守られている日本庭園も多いですね。

能舞台の松は「影向の松(ようごうのまつ)」といわれ、神様が松に宿るという考え方です。

能舞台の松は、全体のかたちや枝ぶりなどに一定の決まりごとがありますが、能楽堂によって松のかたちはさまざまでひとつとして同じ松はありません

ちなみに松が描かれている板を「鏡板(かがみいた)」といいます。

京都観世会館、能舞台の松
京都観世会館の能舞台の松は、京都出身の日本画家堂本印象作。抽象的な表現が特徴。
能舞台の松
石川県立能楽堂 能舞台の松
朝ドラ「おかえりモネ」の能舞台のシーン 
伝統芸能伝承館「森舞台」(宮城県)の能舞台の松は、もりもりとした松の枝ぶり、ボリュームがすごい! 画:日本画家 千住博氏 ※出典 NHK朝ドラ『おかえりモネ』

能舞台の竹の意味

能舞台の松と竹
京都観世会館 能舞台の松と竹

能舞台には松だけでなく竹も描かれています。

松は樹齢を重ねた老松ですが、竹は若竹が描かれます。

能舞台の竹
石川県立能楽堂 能舞台の竹

竹は成長が早く、繁殖力があり、子孫繁栄のシンボルでもあります。

年輪を重ねた松、若々しい竹、老いも若きもひとつの舞台に同居しているのが、いかにも能狂言の世界観を表していると思います。

悠久の時の流れを飛び越えて、舞台の上で過去と現在が同時に存在する能の演目。

そんな能の世界を支える舞台で、老松と若竹が存在していることは興味深いです。

朝ドラ「おかえりモネ」の能舞台のシーン
「森舞台」(宮城県)の若竹は目の覚めるような群青で描かれているのが、斬新(ざんしん)! 画:日本画家 千住博氏 ※出典 NHK朝ドラ『おかえりモネ』
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若竹の生命力あふれる姿が、側面の板に描かれていますよ。

能舞台は正面からだけでなく、横からも見てみてくださいね。

横の板は「脇鏡板(わきかがみいた)」または「横羽目板(よこはめいた)」といいます。

では梅はどこにある?

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では梅はどこに?

松も竹も目に見えるかたちとして存在しますが、梅は演者であり観客だといわれます。

演者の演技(仕舞い・謡い)で観客と世界観を共有することで梅の花が咲くというのです。

こういうところが見立てといいますか、能や日本の伝統文化の深いところです。

演者は梅、観客もまた梅

目に見えるものだけがすべてではないことを、この考えは教えてくれます。

梅は見る人の心に咲く

なんとも粋で意味深いメタファー(隠喩)なのでしょう!

梅
能舞台では演者と観客が世界を共有できたとき、梅が咲くといわれる

実際に梅が描かれている能舞台もあります。

横浜能楽堂は、松に寄り添うように控えめに梅が描かれています。

西宮能楽堂はつぼみの梅が描かれています。

能舞台の松を鑑賞しよう!

こめられた意味を知ることで、能の世界に一歩近づきました。

次回、能を見るときはぜひ時間に余裕を持って会場入りして、開演前に能舞台ならではの松と竹を鑑賞してはいかがでしょう。

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演目が始まると、これまた不思議なことに松の絵は背景となってしまい、視界の奥深くにしずみこんでしまいます。

演者のほうに意識が集中するので、松の絵は意識の深くまで降りていってしまいます。

そもそも松の絵とは、松が目立ちすぎるよりも背景として意識されないくらいのほうがよいとされています。

松の絵には、日本画家の作品としての意味もありますから、演目が始まる前のひとときじっくり鑑賞してみるのもよいと思います。

能舞台の松竹梅のまとめ

松竹梅、お寿司屋さんのランクでも使われますが(下世話ですみません)

能舞台の松竹梅はなかなか深い意味があることがわかりました。

松の絵が見えなくなるくらい演目に入り込んだとき、わたしたち観客も梅になれるのです。

同時に演者も梅になって、能楽堂に満開の梅が咲き誇るのです。

奥深い能の世界ですが、想像力でアクセスが可能です。

ぜひ能楽堂でいっぺん能を見てほしいわ〜

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