伝統芸能である能と狂言。能と狂言を合わせて能楽といいます。
はじめて能楽を見に行くとき、どんな服装で行ったらええんか悩むところやと思います。
ワンピースでええんやろか?
それともスーツがええんかな?
やっぱり着物やないとあかんのと違うやろか〜?
この記事では、能楽を鑑賞する際の服装やマナーについてお伝えします。
能狂言の鑑賞にドレスコードはある?
能狂言は伝統芸能ですが、ドレスコードを設けているところはわたしの知る限り、ありません。
ジーンズやサンダルといったカジュアルすぎるものはNGですが、常識的な服装であればOKです。
好きなバンドのライヴに行くのと同じ感覚でいいんです。
TPOは大切ですが能狂言といっても、特別な服装でなくでも大丈夫。
普段着よりちょっとおしゃれするくらいで問題ありません。
着物でお出かけするのもよろしいですが、慣れへんうちは着慣れた服装でお出かけされるのをおすすめします。
そのほうがリラックスして鑑賞できますし。
はじめての能狂言鑑賞に適した服装は?
能狂言を初めて見にいくとき、女性であればオフィスカジュアルを基準にすれば間違いありません。
オフィスカジュアルでは、黒、グレー、ベージュ、紺などベーシックな色が多いのですが、能、狂言を見るときは多少色の入ったものでも大丈夫です。
周りに不快感を与えない、目立ち過ぎない色味であればOKです。
能の演目はふつうでも2〜3時間の長時間になります。
その間ずっと座りっぱなしなので、腰回りがきゅうくつでないスカートやストレッチの効いたパンツをおすすめします。
見落としがちなのはスカートの場合、スカート丈はひざ下ロングと心得てください。
スカートは、座ると丈が持ち上がってひざが出てしまうので、迷わずロングスカートにしましょう。
もうこれは絶対長めがよいです!どんなに健脚美に自信があったとしても!です。
スカート丈について、私はこんな経験があります。
えっ、私のことと違いますよ〜私よりも一回りも上の御婦人の例です。
最前列に着席した70代とおぼしき上品な女性、鮮やかな色味のきれいめカジュアルのスカートをお召しになっていました。
しかし、スカート丈が少し短めだったため、お座りになるとひざが半分ほど見えていました。
演目が進むにつれて気持ちよくなって居眠りを始められ、脚がだんだん開いていったのでした。
ロングスカートであれば、少々脚が開いても気にならなかったでしょう。
男性の場合も、シャツにスラックスといったカジュアルな服装でOKです。
ジャケットは必ずしも着用しなければならないという決まりもありません。
能狂言の鑑賞、特別なときはおしゃれして出かけるのもあり!
ワンピースは長時間の座り姿勢には意外に腰回りがラクなので、わたしはよく着用します。
ワンピースはウェストがスカートのように締め付けがキツくなく、長時間座っていても疲れません。
スーツでかしこまって出かけるのは、お目当ての能楽師さんの楽屋見舞いに伺うときや、気の張るお方と一緒に鑑賞する場合などです。
あとは、新年最初の演目「翁(おきな)」を鑑賞するときも、その年の平安を願う意味でちょっと気合いを入れておしゃれして出かけます。
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服装に決まりはないがNGはあります!能狂言の鑑賞は大人のマナーを心がけて!
能狂言を鑑賞するには特別な服装でなくてもよいですが、NGはあります。
露出の多いもの
肩出しのタンクトップや、ノースリーブのトップスなど肌の露出が多いものは避けてください。
品がなく能狂言を鑑賞する服装としてふさわしくありません。
デニム素材
Gジャンやジーンズなどのデニムもいかにも遊び着なので、避けたいですね。
最近では鑑賞のハードルを下げるためにTシャツジーンズでOKとしている能楽堂もありますが、大人のマナーとしてできれば避けるのがよいでしょう。
派手な印象のもの
ヒョウ柄やビビッドカラーのものも、場にそぐわないばかりか、周りに与える印象も強すぎるので避けましょう。
膝上のミニスカートも最前列では脚が悪目立ちしてしまうので、避けたいです。
カジュアルすぎるもの
適度なカジュアルはOKなのですが、行き過ぎたカジュアルは避けましょう。
キャラクターTシャツやスウェットなども、大人が能・狂言を鑑賞するのに適した服装ではありません。
また意外に目に付くのが足下です。
サンダルばきやミュールなどはカジュアルすぎる印象になるので、気をつけたいですね!
縁日や夏祭りに行くのではないので、きちんと感を意識しておけば良いですね。
あと、服装ではないですが、香りの強い香水も避けてください。
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慣れてきたら着物で能楽を鑑賞するのは大人の楽しみ
能狂言は伝統芸能なので、着物で鑑賞するのは会場にもよくにあいます。
慣れたきたらお好みの着物を着付けて、能狂言を鑑賞するのは、ちょっとした大人の楽しみです。
公演では通(つう)の方の着物姿を必ずといってよいほど見かけます。
小紋(こもん)のようなおしゃれ着は能を観るのにふさわしいと思います。
小紋は洋服に例えるならワンピースに当たります。
色無地(いろむじ)や付け下げ(つけさげ)もフォーマル感があっていいですね。
紬(つむぎ)も柄によっては、素敵だと思います。
着物は背筋がシャンと伸びて程よい緊張感もありますので、普段から着慣れている人は、着物で鑑賞すると一目置かれます。
ただ長時間座っているので、意外と肩が凝ったり疲れるものです。
帯結びなどを工夫して疲れにくい着付けで見に行くとよいでしょう。
着物姿はひときわ目立ちますので、人から見られていることを意識して、立ち振る舞いや言動には気をつけましょう。
上演される演目や劇場の規模によっても、ふさわしい着物は変わってきます。
第三者の視点で慣れた人にアドバイスしてもらえると安心です。
初心者が知っておいたほうがよい能狂言の鑑賞マナー
マナーとは、人間関係の潤滑油です。
知らない他人同士が同じ舞台を見るために一堂に会しているのですから、ちょっとした気づかいと思いやりを持って、気持ちよく鑑賞できるように心がけたいですね。
撮影・録音禁止
能・狂言に限らずですが、肖像権などの関係で禁止されています。
携帯電話
マナーモードのバイブ音は周囲に迷惑となります。
必ず電源を切りましょう。
私語は慎む
開演前は小さな声でのおじゃべりは許されますが、演目が始まったらピタッと止めるようにしましょう。
飲食
能狂言の観賞に限らず、客席では飲食禁止です。のどが乾いたら、飲み物はロビーで飲みましょう。
※2020年、新型コロナウィルス感染拡大対策で接触の機会を減らすため、石川県立能楽堂ではロビーが閉鎖されています。
そのため、熱中症予防策として座席で飲み物を少し口にするのはOKとされています。
隣の席への配慮
能楽堂の座席は、一般のコンサートホールなどに比べてやや狭いところもあります。
肘掛けから体をはみ出させないなどパーソナルスペースを侵さないよう、隣の席への気遣いを持ちましょう。
私は以前、譜本(うたほん)を見ながら鑑賞している男性が、ひじかけから腕をはみ出してきて舞台に集中できなかった経験があります。
お隣さんには気をつかって気持ちよく鑑賞したいですね。
あとから着席する場合
列の真ん中あたりの席で、すでに大勢の人が着席している場合、あとから着席するときには、一声かける気配りも大切です。
「すみません、前失礼いたします」
と、一言断ってから列に通していただくと、スマートです。
拍手
拍手をするのがよいのか?
能狂言の観賞では、演目が終わってもすぐに大きな拍手が鳴り響くことはありません。
余韻を楽しむためあえて拍手をしないのは失礼になりません。
ただし、満足したので拍手を送りたい気持ちがあれば、先に拍手が起こってからそれに続いてそっと送りましょう。
能狂言での拍手は、演劇のような鳴り止まない拍手ではなく、パラパラとそっと心からおくる拍手といった感じです。
手荷物
大きな手荷物はコインロッカーに預け、座席ではハンドバッグ程度にしましょう。
たいていの能楽堂でロビーに設置されています。
しかし数は多くないので、早めに会場に到着し預けておくと安心です。
休憩はないのが基本
能狂言の上演では、2〜3時間の長時間となりますが、休憩は途中1回か、ない場合もあります。
上演前は水分を控えめにしておきましょう。
眠くなったら
ゆっくりしたリズムで進む能では、アルファ波のシャワーを浴びて眠気を催すことがあります。
そんなときは、そっと目を閉じて体を椅子に預けましょう。
くれぐれも隣にもたれかかったりしないよう気をつけて、目立たないように眠りましょう。
間の狂言で目を覚ます機会はありますから大丈夫!
知っておくと安心!初心者におすすめの座席は?席は自由席?
能楽堂の観客席を「見所(けんしょ)」といいます。観客がいてこその上演である雰囲気が感じられる呼び方ですね。
おすすめは「正面」・・・舞台を真正面から鑑賞できる
特等席はやはり「正面」です。
シテ(能面をつけた主役)を真正面から鑑賞できますし、迫力も感じられておすすめです。
最前列はシテを間近で観ることができ、前列の人も気にならず視界にさまたげが入らないのでおすすめです。
ただし、舞台をやや見上げる角度になり、演者の足さばきが見えづらいのが少々難点ですが。
個人的には正面3列目ほどの真ん中ほどもよい席だと思います。
この場所はシテの足さばきも観ることができ、舞台全体も観ることができます。
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私は先日、正面と中正面の中間の座席で鑑賞しました。
能面をかけて視界が狭いシテは、柱を舞台幅の目安としています。
柱の方向に向かってここ一番のとき、シテが視線を飛ばします。
ちょうど柱の先で鑑賞していた私のもとには、ビンビン飛んでくるシテの念がこれでもか〜というくらい突き刺さりました。
まるで私のために飛ばしてくれはった念のようでした〜〜シテの役柄は稲荷明神様だったので、おそれ多くありがたい念を受け取りました、おおきに。
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慣れた方なら「中正面」も・・・舞台を立体的に観る
「中正面」はちょうど舞台を斜めに観る座席です。
柱が少しじゃまですが、舞台を俯瞰(ふかん)して観ることができるので、流れや全体を理解するには良い席だと思います。
真横から観る「脇正面」・・・始まりと終わりが近くで見られる
舞台を真横から観る席です。
役者は正面を向いて演じるのでやや迫力に欠けますが、たまには違う角度で観たい人におすすめです。
左側の座席は役者が登場、退場する橋がかりののそばなので、役者を近くで観ることができます。
お目当ての地謡(じうたい)がいるなら正面から観ることもできます。
脇正面は、舞台を横から見るかたちになりますが、奥行き感が感じられ、舞台を立体的にとらえることができるので、わたしは好きな席ですね。
指定席ではない場合は、席は早い者勝ち
能楽堂や公演によっては指定席の場合もありますが、チケットに「指定」と明記されていない場合は自由席で、座席は早い者勝ちになります。
開場は30分〜1時間前のところが多いですが、人気の公演ではそれ以前から開場待ちの行列ができていることも多いです。
私がよく行く石川県立能楽堂では、だいたい開場の30〜40分前くらいから人が集まり始め、行列ができています。
特等席の正面の席を狙って並ぶ人たちが多いですね!
能楽堂によっても決まりがあると思いますが、事前に確認しておくとお目当ての席に着席できる確率が高くなるでしょう。
能を見に行くとき持って行くとよいもの
能楽堂の中は空調が効きすぎていることもあるので、ストールがあると冷房対策になっていいですね。
最近はコロナ対策でドアが開けっ放しにされているので、冬場は暖房が利きにくく会場が寒い場合があります。
足元が冷えるので、膝掛けは必須ですね。
先に会場入りして座席をキープしておく場合、予備のハンカチなどもあると便利ですね。
あと、歌舞伎のときにはオペラグラスなども活躍するのでしょうが、能ではそれほど舞台が遠くないので、私は不要と思います。
能狂言を見に行く下準備
できればインターネットなどで調べてあらすじを先に読んでおくと、内容が理解しやすいです。
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能狂言の鑑賞といっても正装で出かけなくては!ときばる必要はありません。カジュアルなお出かけ着で、能狂言を楽しんでください。
慣れてきたら着物に挑戦してみるのもステキですね。
服装もマナーも周囲への気配りを忘れず、時間に余裕を持って会場入りして、お目当ての席で能狂言を楽しんでください。
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