【能と狂言の違い】似ているようでこんなに違う!同じ舞台で演じられるのはなぜ?

能と狂言ってどう違うん?

どっちも、むかしのことばで演じる伝統芸能やん?

能も狂言も能舞台で演じるからおんなじもんと違うん?

この記事では、能と狂言の違いをわかりやすくお伝えします。

能と狂言の違いはここ!

能は神や幽霊が主役の仮面劇です。

あの世から幽霊が現れ、この世に残したうらみつらみを問わずがたりする回想ものが多いのが特徴です。

未練や悲話をあふれんばかりに語り出します。

語り尽くしたあとは舞を舞い、静かにあの世へと帰っていきます。

一方狂言は、庶民の日常の出来事をおもしろおかしく脚色して笑いへと昇華させた言語劇です。

身ぶり手ぶり大きくかけあいと言葉のやりとりで演じられるコントのようなものです。

能は悲劇、狂言は喜劇、テンポが真逆の能と狂言ですが、昔から同じ舞台でセットで演じられるのがお決まりとされてきました。

能と狂言のルーツは?もともとは同じ芸能から進化した歴史が!

能・狂言は奈良時代に中国大陸から伝わった散楽(さんがく)を元に独自に発展した舞台芸術です。

散楽は猿楽(さるがく)ともいわれ、ものまねや曲芸、踊りや唄なども含む庶民の娯楽として広まりました。

この中のものまねやダジャレなどの言葉遊びは、日常の出来事をおもしろおかしく表現する狂言へと発展していきました。

猿楽の中の踊りや唄などは宗教行事と結びつき神社で舞われたり、農耕儀礼の田楽(でんがく)とも混ざり合い能として進化していきました。

室町時代の芸能座の役者であった観阿弥(かんあみ)が能の原型を作り、その息子である世阿弥(ぜあみ)の時代にほぼ現在のかたちになったといわれています。

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能舞台

戦国時代になると、豊臣秀吉(とよとみひでよし)は自らも能を舞うほど、能を好み手厚く保護しました。
能は歴史の中で幾度かの変化を乗り越えつつ、現在まで一度も途切れることなく続いている世界でも最古の舞台芸術です。

能の特徴

源氏物語や伊勢物語など、日本の古典文学を題材に演じられるのが能です。

囃子方(はやしかた)も含め総勢20名程度が舞台に出て、セリフを謡(うたい:言葉にふしをつけたもの)で表現します。

能では主役が面(能では面のことをおもてといいます)をつけて演じます。

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能面

狂言の特徴

一方、庶民のくらしを皮肉とユーモアを織り交ぜておもしろおかしく演じるのが狂言です。

お笑いの原型ともいわれていて、能の合間に演じられコント的な役割も持っています。

狂言は2.3人の登場人物で話し言葉が中心の言語劇です。

狂言では特殊な演目を除き面(おもて)はつけません。

能と狂言が同じ舞台で演じられるのはなぜ?

能も狂言もルーツは「猿楽」にあるのですが、両者はまったく性質の違う劇として発展してきました。

性質の異なる能と狂言が同じ舞台で演じられてきた理由は、悲劇である能の間に喜劇である狂言をはさむことによって、緊張をほぐす目的があったのだと考えられています。

例えるなら能がオペラだとして、狂言はコントです。

長時間にわたるオペラの合間に、小休止に軽い笑いをはさむことで緊張をほぐし再びオペラにじっくり浸ることができる。

飽きさせない工夫をしたことはすぐれた演出で、両者の関係は実にうまくできていると思います。

能と能の間に演じられる狂言は、独立したひとつの寸劇です。

能と狂言の共通点は?

能と狂言の共通点を挙げるならば、能と狂言という垣根を超えて一緒の舞台に立つことがあります。

演目は限られるのですが、能と狂言とが同じ猿楽の流れをくみ、同じ芸能から枝分かれして発展してきた歴史を示しています。

間狂言(あいきょうげん)「アイ」ともいう

能は、ひとつの演目でも、前半と後半に別れる場合が多いのです。

劇でいうなら、場面転換ですね。

前半と後半の間に、狂言師が前半のあらすじをまとめた口上(こうじょう)を述べます。

これを「間狂言(あいきょうげん)」といい、同じ舞台で演じます。

翁(おきな)では、白い翁は能役者、黒い翁は狂言役者

新春やおめでたい場で演じられる『翁(おきな)』。

白い翁「白式尉(はくしきじょう)」は能役者が、黒い翁「黒式尉(こくしきじょう)」は狂言役者が演じます。

満面の笑みをたたえた、能面でも珍しい笑顔の面で、能の演目翁(おきな)を演じるときだけ使われる特別な能面です。白い翁と黒い翁があり、それぞれに意味が違いますが、どちらも人々の幸せを祈る面です。能楽師は翁の面をつけることで神に姿を変えます。

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能面・翁と黒式尉

それと、能役者は白い足袋(たび)を履きますが、狂言役者は卵色(黄色)の足袋(たび)をはきます。

翁の演目に限らず、舞台に立つときはいつでもそうです。

理由は、狂言役者は黄色い足袋(たび)を身につけけることで、神様に捧げる舞を演じる能役者への敬意をしめしているといわれています。

ぜひ足元にも注目して見てみてくださいね。

能と狂言の大きな違いのひとつは発声!シリアスな能と笑いの狂言

謡(うたい)の能

能は基本的に悲劇の演目が多く、亡霊や神、鬼などがあの世からやってきて、旅人などに愛憎や恨み、哀惜などを語って聞かせるという筋立てになっています。登場人物も歴史に名を残した貴族や階級者です。

全体を通して静かに語りかける謡が中心となる能では、言葉は区切りが明瞭でなく低いテンションで続いていきます。

小鼓や太鼓、笛などの鳴り物が謡を盛り上げ、クライマックスの舞は一番の見せ場、太鼓や小鼓、笛、謡と舞とが一体となり、荘厳なドラマが立ち現れます。

能の世界観を表す言葉に幽玄がよく使われます。しみじみとした趣があり奥深さのある様子をこのようにいいます。

かけあいの狂言

一方狂言は、一般庶民の主人と家来が主役の演劇です。

出だしからその声の大きさに驚く人も多く、能楽堂全体に響き渡るほどの声が舞台にグイグイ引き込みます。

漫才のような掛け合いでテンポよく話が進んでいき、身振り手振りも大きいので、観ているものを飽きさせません。

ズカズカズーン、ドッカドッカなど、狂言は擬音の宝庫でもあります。

狂言では舞台セットもなく、あっても小道具くらい。

ナレーション、舞台セット、音響もすべて演者が言葉で表現する言語劇です。

感じる能と笑いの狂言

私も慣れないうちは、能の謡を聞きとるのに時間がかかりました。

昔の言葉なので、最初のころは何を言っているのか意味がわからなかったのです。

でもあるときふと物語の中に気持ちよく入り込むことができ、気付いたらシテ(主役)の言葉が理解できる瞬間がありました。

聞きとるのではなく「感じる」、能とはそんなものかもしれません。

狂言は話し言葉なので、昔の言い回しであっても理解しやすいです。

現代でいえば上司と部下とに読み替えることのできる主人と家来が、身近な題材をテーマにユーモアと皮肉を交えて、最後に主人をぎゃふんと言わせる筋書きは見ていて痛快そのものです!

人を笑わせるのは、台本と技術がしっかりしたものでないと難しいといいますが、まさにそのとおりでハイクオリティな笑いの言語劇が狂言なのです。

能と狂言の衣装はこんな違いがある!

能の衣装は絢爛豪華

能を好んだ豊臣秀吉の時代、衣装に大きな変化が起こりました。

派手好みの豊臣秀吉は、それまで着物の延長だった能の衣装を派手を極めた大がかりな装束(しょうぞく)へと進化させたのです。

能の衣装は唐織(からおり)と呼ばれる中国風の織物が代表的です。

金色や華やかな色糸で草花や紋様などを浮き出すように織った豪華絢爛な装束です。

唐織は女性が身につけることが多く、赤、黄色、緑などの鮮やかな色彩と豪華な質感は、息をのむ美しさです。

男性がつける装束には亀の甲羅(こうら)のような亀甲(きっこう)や、雲を模した雲紋(うんもん)などの伝統紋様がデザインされていることも特徴です。

染め物の装束は、老人や漁師などに扮したシテが身に着けることもあり、ひなびた雰囲気をかもすのに格好です。

直線で構成された装束は、大きくはっきりした舞いを際立たせくっきりと見せます。

能装束の美しさは、すべてを大きくはっきり見せてくれる直線美です。

狂言の衣装は簡素な庶民の日常着

一方で狂言の衣装は簡素です。狂言には主人と家来が登場しますが、主人は裃(かみしも)に長袴(裾を引きずる長い袴)で権力を示し、家来は裃にくるぶしまでの動きやすい丈の袴(はかま)、両者とも派手さはなく中流階級の衣装といった雰囲気です。

なお能・狂言の世界では衣装を装束(しょうぞく)と呼び、装束は役者の所有物で持ち運びも役者自身が行うのが通例です。

衣装を観るのも観賞の楽しみ

特に能のシテの衣装は、実際に舞台で鑑賞すれば、そのスケール感に驚きます。

面積も大きく、装飾や質感にうっとりさせられます。

動きが加わることで、直線断ちの着物の美をより魅力的に見せてくれます。

まとめ

私は能を見始めてまもない頃、物語がよく理解できなくても衣装を観るのが楽しみで観ていた時期もありましたし、今でも装束は能を観る楽しみのひとつです。

毎回、今度はどんな装束で現れるのか、とワクワクし、豪華さと荘厳さにうっとりしてしまいます。能を初めて観る方にとっては、衣装をとっかかりとして能の世界観を楽しむ入り口にするのもよいと思います。

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最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!