【能面は怖い】能面の意味・女の人生を映した女面の深い悲しみ

能を見たことのない人でも、能面は目にしたことがある人がほとんどやと思います。
能面と聞いてどんなもんをイメージされますか?
たぶん、代表的な女面ではないでしょうか。

うりざね顔におちょぼ口、空(くう)を見据えたような視線。
神秘的な笑みを浮かべ、人間ともそうでないものとも感じ取れる能面。
この記事では、能面の種類、能面をつける意味と、能面にまつわるトピックをご紹介します。

能面の種類を解説!

翁面(おきなめん)

儀式性の強い能「翁」でのみ用いられる。神を表したおめでたい能面。
目じりが下がりやさしくほほえんでいます。

能面・翁
能面・翁は特別に神聖な神とされる

尉面(じょうめん)

老人男性の面。
ほおがこけ、目には哀愁(あいしゅう)がただよいます。
人生経験を積んだものさびしげな表情をしている面が多い。

 

珠緒
こんな雰囲気の紳士、町内の会合とかによう出てきてはるで
能面の尉面
尉面(じょうめん) 年老いた男の亡霊 上品さも感じられる

女面(おんなめん)

年若い女性から鬼と化した般若(はんにゃ)まで多くの種類があります。
能面の数だけ、多種多様な女性のかなしい物語があります。
まさに人生いろいろ〜女もいろいろ〜ですね!

 

珠緒
小面って笑ってるみたいでかわいいな〜 お肌もツルツルでうらやましいわ!
能面小面と孫次郎
小面と孫次郎 どちらも若い女性 口角がキュッと上がっている

 

珠緒
わ〜!!これは怖いわ!!死んでるみたいな目、あっ死んだ人やった能面って
能面痩せ女
痩せ女 口角が下がり、人生の哀愁を感じさせる

男面(おとこめん)

うれいを帯びた「中将(ちゅうじょう)」などが有名。

中将はアンニュイな困り顔、男前でわたし好みです〜♪

 

珠緒
困り顔にしびれる〜〜❤️ わたし好みやわぁ
能面中将
中将の能面、憂いを帯びた中年の顔

中将の面についての興味深いお話を2つ。

性の極まり つまり 生殖行為での極限状態

仏へと昇格する際の苦しみもだえる表情 

との説もあります。

鬼面(おにめん)

天狗の能面
おおべしみ 天狗の能面

仏面(ぶつめん)

意外ですが、お釈迦(しゃか)様もラインナップされていますよ〜!
おなじみ、クルクルパーマの奈良の大仏さんも!
わたしはまだ観たことがありませんが、ぜひ観てみたいものです。

能面をつける理由と能面の意味

能面をつけることを「おもてをかける」といいます。

「おもて」とは面のことです。

ことばのとおり、演者が自分というものを捨て、能面(おもて)を演じることからこのようにいわれます。

能面をつけるということは、異界の怨霊や神に「なる」ことです。

能面をつけているものは、この世のものではありません。あの世から現れ出た異界のもののけです。

能面をつけて見た目を変装して役柄を演じるのではなく、中身も心も役柄そのものになるわけですね〜

能が深いといわれるわけは、その姿勢にもあると思います。

幽霊になりきるのですよ!

どれほどのエネルギーを注ぎ込むか、想像しただけでも重いことがわかります。

う〜〜ん、能面って深い!能楽師ってあの世とこの世を行き来するいたこのようでもありますね。


女面の代表的な小面(こおもて)とは?

女面は能面の中でも多くの種類があります。中でもよく知られているのが「小面(こおもて)」です。

若い女の面で、目鼻口が中央に寄り、頬が高く口角がきゅっとつり上がっています。初(ういうい)しい若さがただよいます。

能面小面
能面小面 正統派美人に思えるが、よく見るとわずかに左右非対称に作られている

2020年8月15日に石川県立能楽堂で観た能「吉野静(よしのしずか)」では、シテ(能面をつけている主役)が小面をつけていました。

この日のシテは松本博さん。

よく表情のない顔を能面のような表情といいますが、これとはまったく逆の、血の通った生きているかのようなつややかな表情を見せてくれました。

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能面の小面と孫次郎

能面は役者さんによって、命を吹き込まれます。

あの世の人なのに命を吹き込まれるというのもなんだかおかしな話かもしれませんが、命を宿しているかのような柔和な表情に驚き、見惚れました。初々しい若さが印象的な吉野静でした。

また小面ものは、衣装・・・正しくは【装束(しょうぞく)】といいます・・・も華やかで見応えがあり楽しめます。

この日の吉野静の衣装も、ピンクのパステルカラーに色とりどりの花が描かれたゴージャスな着物でした。

美しいものはいいですね!心が満たされ、豊かなきもちになれました。

能面が怖いのはなぜ?

能面には神、鬼、女など種類がありますが、鬼が怖いのはまぁあたりまえに怖いとしても、女面でも何とはなく不気味でこわい雰囲気を持っていますね。

無表情といわれる能面ですが、むかしの日本では喜怒哀楽を顔に出すのは品がないとされてきました。

室町時代の女性は、楽しい、うれしい、くやしい、などの感情を表に表さないのが上品とされたのです。

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能面中将

今では考えられないことですが、無表情は身分の高い人にとって美しさの基準でした。

身分の高い女性はお歯黒をしましたが、これも口元をわざと暗くして表情を読み取られないようにするためでした。

能面も表情がなく(本当はあるのですが)うれしいのかかなしいのか、何を考えているのかわかりにくいです。

現代の私たちからみれば、美しさの基準が違っているのでときに神秘的に、不気味に感じられるのでしょう。


能面が怖い理由は、幽霊や亡霊そのものを表しているから!

能で面(能では面のことを「おもて」といいます)をかけているのは、あの世の人物です。

つまり幽霊や亡霊を表しているから、こわいのです。

能面の種類にはさらに細かな分類があるのですがやせ女、やせ男の分類は、やせこけて目が落ちくぼみ、うつろな目線でぞっとするくらいこわいです!

さらにいうと「阿漕(あこぎ)という演目でつけられる「蛙(かわず)」という面は、なんと水死体の面なのです!

ひぇ〜〜!!

やせて骨と皮だけになった顔に、濡れた髪の毛がべったりとはりついている男面は、鬼の面よりももしかすると怖いかもしれません。

そもそも能という芸能は悲劇のお話で、この世に思いを残して亡くなった人の魂(たましい)を沈める祈りの芸能です。

狂言のように説明もなければ、わかりやすいかけあいもありません。

ことばも昔の話ことばで、謡(うたい)の意味もよくわからない。

話の筋も抽象的でわかりにくい。

全体的に神秘的でわかりにくいところも怖さを感じてしまう理由だと、わたしは思います。

能面は能楽師によって命を吹き込まれる

そんな無表情で不気味と感じてしまう人も多い能面ですが、ひとたび能楽師が身につけて演じると、まるで生きているかのような表情を見せてくれて驚くことがあります。

物語の世界にひたりきっているとシテ(能面をつけた主役)の謡(うたい)と身ぶり、手ぶり、動きとが一緒になって能面も笑ったり悲しんだり、表情が変化します。

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能面中将

あれ、今ほほえんだけど、私の錯覚??ってなったことが何度かあります

ついでにいうと、能では舞台装置はほとんど出てきいひんのですが(これも観る人の想像力にまかせるという能のスタンスです)

波の音が聞こえてきたこともありました

これらは決して、わたしが想像力豊かということではなく、能楽師の演技力と、その世界にいざなってくれる演者によるものです。

ここでちょっと補足を・・・わたしが想像力豊かではないと言いましたが、能とは演者と観客が一緒になってつくりあげる舞台芸能です。

これはまぁ能に限ったことではないんですが、能を見るときは、想像力が必要なんです。

なんでかと言うと、能ではわかりやすい舞台装置もわかりやすい演出効果もないので、想像力で補って見る(感じる)しかないからです。

能楽師(シテ)とワキ(脇役)、小鼓(こつづみ)、大鼓(たいこ)や謡(うたい)、後見(こうけん)など、能の世界を作り上げるチームワークと創作魂に自分の想像力をプラスすることで、能の世界を味わえるというわけです。

本当にいつもすばらしい演目をみせてくださる能楽界のみなさまに感謝しています。

般若(はんにゃ)って鬼?怨霊?哀しみと怨念が同居する哀しき女面

「般若(はんにゃ)」は、鬼に姿を変えた女の怨霊(おんりょう)です。

源氏物語をもとにした「葵上(あおいのうえ)」では六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)の生霊(いきりょう)として現れます。

般若(はんにゃ)の鬼のような(鬼ですが 笑)形相(ぎょうそう)は、女の執念ってこわいな〜と、我が身を振り返ってみたりします(笑)うらみとは、こんなにも人を変えるのですね!

狂おしくもかなしげなまなざし、口は耳元まで大きく裂け怒りもあらわ。

頭には二本の角(つの)が!かなしさと怒りとが入り混じった女の執念(しゅうねん)深さをまざまざと見せつけてくれます。

 

珠緒
女の恨みを甘く見たらあかんで〜 怒らせたらこんなんになるで〜
能面 般若
般若(はんにゃ) 鬼となった女の亡霊

小面(こおもて)が感情を押し殺した「静」であるのに対して、般若(はんにゃ)は「動」です。

嫉妬(しっと)に狂った女のくやしさと怒りが爆発する、かなしき女の面です。

翁(おきな)の能面は神聖な儀式の舞でのみつけられる

うらみ、つらみ、やきもち、そんな悲しい物語が多い能ですが、おめでたい演目もあります。

魂(たましい)を鎮める(しずめる)のもいいですが、ネガティブな演目ばかりでは、気が滅入ってしまいますものね。

能の演目で、超ポジティブなものが演目「翁(おきな)」です。

「翁」でつける能面も「翁(おきな)」。福の神のようなにこやかな老人の面です。

「翁」は儀式的要素の強い能で物語はなく、翁面(おきなめん)をつけた神が天下太平(てんかたいへい)を祈り捧げます。

新春を祝う新年の能で披露されることが多い演目です。

まず色の白い翁面をつけた能の役者が、国土安泰(こくどあんたい)を祈り、次に狂言の役者が色の黒い翁面をつけて五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈ります。能狂言の元となった猿楽(さるがく)の農耕儀礼を色濃く感じさせます。

翁面は深いしわの刻まれた老人の男性です。目尻が垂れて穏やかな笑みをたたえ、あごには長いひげが伸びています。おもしろいのは、色の黒い黒式尉(こくしきじょう)の面です。農作業で日焼けしたたくましい老人のような顔立ちです。

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能面・翁と黒式尉

 

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『翁』を演じる観世清和氏 ※出典 BS日テレ『祈りのかたち 皇居外苑特別公演』

 

どちらの翁も福顔で、人生をよりよく生きた人は晩年、こんな顔になるんだろうなと思わせてくれる安心感と親しみやすさがあります。福の神を連想させてくれるおめでた顔です。

能面が怖いのはなぜ?まとめ

鬼の面はふつうにこわい
無表情からは感情が読み取れず、わかりにくさが不気味さにつながっている
亡霊や幽霊を表しているからこわい

能面と一言でいっても、種類はたくさんあります。女面は種類が多く、それだけ演目の数も多いですから、まず能らしい女面の能から観るのもおすすめです。

何度か通い舞台に集中していると、能面が生きた女性のように見えてくるから不思議です。

これも能楽師の集中力と魂の込め方、自分の想像力よるものです。

人間なら誰しもが持っている、喜怒哀楽、ときには愛憎、うらみ、つらみなどのマイナスの感情さえも純粋な世界へと高めてくれる。

感情を抑えた能面には、ドロドロと渦巻く情念を昇華(しょうか)させ、一段高い世界へと導いてくれる力が秘められています。

能を見るときにはぜひ、能面に秘められた思いを意識しながら見てみてください。

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それでは
最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!