能に親しむようになって10年ほどになります。
最近では月に1回のペースで能を鑑賞しています。
能面のような顔という言葉がありますが、能に親しむようになって見えてきた能面の別の顔があります。
この記事では、能面の種類と美しさについてわかりやすく説明します。
能面の深い世界をお楽しみください。
能面の種類と意味、怖い理由
能面はあの世の人を表しています。
年若い女性から鬼と化した般若(はんにゃ)まで多くの種類があります。
能面の数だけ、女や武士たちのかなしい人生の物語があります。
地獄からさまよい出た亡霊・痩せ女(やせおんな)の面もあるんですよ!
これはほんとに怖い!
能面は無表情といわれ、(本当はあるのですが)うれしいのかかなしいのか、何を考えているのかわかりにくいのです。
無表情からは感情が読み取れず、わかりにくさが不気味さにつながっています。
能を見たことのない人でも、能面はどこかで目にしたという方も多いと思います。能面と聞いてどんなもんをイメージされますか?たぶん、代表的な女面ではないでしょうか。うりざね顔におちょぼ口、空(くう)を見据えたような視線。[…]
無表情といわれる能面ですが、むかしの日本では喜怒哀楽を顔に出すのは品がないとされていました。
今では考えられないことですが、無表情は身分の高い人にとって美しさの基準だったのです。
身分の高い女性はお歯黒をしましたが、これも口元をわざと暗くして表情を読み取られないようにするためでした。
現代の私たちからみれば、美しさの基準が違っているのでときに神秘的に、不気味に感じられるのです。
トランス状態を体験したことのある人はそう多くないかもしれません。どんな状態かをひとことで言うと、自分とまわりとの境界線があいまいになって、意識が遠のき、しかし非常にリラックスしているそんな非日常の身体感覚です。トラン[…]
能面は生きている?
一見無表情といわれる能面ですが、細部には意外な工夫がされています。
モデルや女優さんは、鼻を中心として左右対称の均整のとれた顔立ちが、美しさの条件とされています。
でもふつう多くの人間の顔は、わずかに左右非対称にできています。
能面もわずかに左右非対称にできています。
よく見ると、目の高さや口もとの開きぐあいなどが左右で少しずつ違っています。
無表情といわれる能面に表情を与えるための工夫なのです。
能面が想像以上に表情をもつことは、能を何度かご覧になった方であればお気づきのことだと思います。
能面は能楽師がつけると笑ったり悲しんだり、喜怒哀楽の表情を見せます。
無表情といわれる能面ですが、目を凝らしてすみずみまでながめてみると、意外な工夫がされていて驚きます。この記事では能面に隠された秘密と、喜怒哀楽の表現の工夫についてお伝えします。[adcode]表情の豊かさは、女優の幅を広[…]
能面は、その角度によって喜怒哀楽を表現します。
面を上に向けたときと下に向けたときとでは、ドキッとするくらい表情が変わるのです。
しかし、角度だけで喜怒哀楽が表現できるかといえばそうでなく、能楽師の魂(たましい)が能面に入り込むことによって、能面ははじめて表情を持ちます。
能面 小面は美しい!
「能面」といえばおそらく多くの人が思い浮かべるのが、女の面でしょう。
能面の代表格ともいえる「小面(こおもて)」は、若い女性の面です。
まだ能をよく知らないころわたしは、小面(こおもて)を不気味だと思っていました。
しかし、能に親しむようになって能面の見方が変わり、美しいとさえ感じるようになりました。
小面のチャームポイントはどこにある?小面の美の秘密について、こちらで詳しく書いています。
能面を言い表す、「能面のような顔」ということばがあります。一見無表情に見える能面を怖いと感じる人も少なからずいるようです。わたしも能をよく知らないときは、能面を不気味だと思っていました。しかし、能に親しむようになって[…]
小面(こおもて)は口角(こうかく)=口もとがキュッと上がっていて、若々しさを感じさせます。
半開きになった口もとには、かすかなほほえみをたたえています。
口もとは年齢を表す鍵でもあります。
小面の口もとは本当にチャーミングです。
物いいたげな口もと、今にも何か話し出しそうにさえ思えてきます。
能面 翁は祈りの面!
能面「翁(おきな)」は、能面では珍しい笑顔の面です。
深いしわが刻まれた老人は満面の笑みをたたえ、豊かなあごひげをたくわえています。
翁には白い翁と黒い翁があり、両者の意味も少し違います。
能は神様に捧げるものですが、中でも特に神聖なものとされている特別な能があります。演目「翁(おきな)」です。演目「翁(おきな)」で使われる能面は、その名も翁(おきな)。満面の笑みをたたえた、能面でも珍しい笑顔の面で、能の演目翁[…]
能の演目翁(おきな)を演じるときだけ使われる特別な能面です。
他の能面がいろいろな演目に使われるのに対して、翁の能面は「翁」の演目以外には使われません。
翁の演目はふつう、新年初めに上演されます。
【能・翁のあらすじと感想】儀式めいた舞は新年にふさわしいおめでたさ!
かねてより一度は観たいと切望(せつぼう)していた能・翁を観てきました。この記事では、翁の鑑賞記をお届けします。[adcode]【能・翁初鑑賞記】感想と見どころ揚幕(あげまく)から行列をなして現れた演者の列。出だしから[…]
天下太平(てんかたいへい)、国土安寧(こくどあんねい)を祈る儀式性の強い舞です。
そのことからも、演目「翁(おきな)」は「能にして能にあらず」といわれていて、他の演目とは一線を画しています。
翁には、白い翁と黒い翁があり、それぞれに意味が違いますが、どちらも人々の幸せを祈る面です。
おかめは能面とどう違う?おたふくとの違いは?
おかめといえば、福々しい下ぶくれのお面で、関東に本社のある納豆のキャラクターにもなっていますね。
おかめはどことなく能面と共通した雰囲気を感じませんか?
狂言面の不美人の面「乙(おと)」の口もとのゆがみなどを修正して、福顔にしたのが「おかめ」です。
つまり狂言で不美人(=みにくい女)とされている面をもとに、歪みなどを修正して愛嬌(あいきょう)のある顔にしたのが、「おかめ」というわけです。
わたしは以前、狂言面の「乙(おと)」を見たとき、あまりのグロテスクさに卒倒しそうになりました。
デフォルメされたブサイクさ!
色は浅黒く、鼻は上を向いて口元がゆがみ、まるで妖怪(ようかい)のような不気味さでしたよ。
おかめは、(ブサイクな)乙をもとにしていますが、かわいらしく整形してもらってよかったと思います。
かわいくしてもらったおかげで今では、企業や商品でも福顔のキャラクターとして親しまれています。
おかめとよく似ている面におたふくがありますが、どう違うのでしょうか?
おかめとおたふくの違いについては、こちらに詳しくまとめています↓
おかめといえば、福々しい(ふくぶくしい)下ぶくれ(しもぶくれ)のお面です。関東に本社のある納豆のキャラクターにもなっていますね。おかめとよく似たお面におたふくがあります。おかめとおたふくは何がどう違うのでしょうか?[…]
能の魅力とは?簡単にわかりやすく!【誰でもわかる初心者向け徹底解説】
伝統芸能の中でも能は、とっつきにくくハードルが高く感じられるようです。まして能楽堂に出向くのは気おくれしてしまう人も多いかと思います。むかしのことばで話すので理解しにくく高尚(こうしょう)なイメージがあるのは否定できません。[…]
最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!
紙質も上質、カラーが美しい能面の入門書です。
洗練された編集で、要所要所にあしらった伝統文様のあしらいがアクセントになっています。
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