始末する(しまつする)
とは、京都で日常的につかうことばで、ものを大切に使う、倹約するという意味です。
「始末」ということばにポジティブなイメージはあまりないかもしれません。
ビジネスで過失をわびる始末書や、始末をつけるなど、はじめとおわりをきっちり線引きするという使い方が一般的です。
そやけど、「始末」は、京都では別の意味になります。
つつましくくらす知恵として今でも息づいています。
この記事では京都の「始末(しまつ)」をお伝えします。
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始末するは京都で日常的に使うことば
「始末せなあかんで」
わたしは母からこう言われて育ちました。
始末とは、ふだんのくらしでぜいたくをつつしみ、ものを無駄にしないことです。
たとえば現代、お茶はペットボトルのお茶を飲むことはあたりまえになった常識ですが
わたしの子どもの頃は、ペットボトルのお茶はよそゆき
普段のお茶は家で沸かしていました。
始末せなお金はたまらへん
始末してやりくりせなあかん
そんな価値観でわたしは育てられました。
始末するってどういう意味?
始末するとは、
もったいない、使い切る、
まだ着れるもんは洗濯して繰り返し着る
新しいものばかりに目を向けないで、今あるものを使い切る
毎日のくらしは、あるもんで食べてあるもんを着て、あるもんで過ごす。
買い物しなくても数日はくらしていけるやろ。
今日は冷蔵庫の残りもんで料理しよ。
そんなふうにつつましくくらすことが「始末」です。
始末とケチとは違います!
始末することとケチとは、根本的に違います。
使えるものは最後まで使うのが「始末」
たとえば、にんじんの皮も捨てずにきんぴらにして使うというように。
もったいないの心で最後まで使い切るのが、始末。
始末は、倹約、節約ということばが当てはまります。
始末は自分を律してコントロールすることです。
「ケチ」とは、出さなければならないお金も渋ること。
ご祝儀の金額を渋って少なくしたり、コーヒー1杯でさえももったいないからとつきあいをしなかったりと
出すべきお金を渋り、ケチくさい、貧乏くさいお金の使い方をすることです。
ケチな人はこちらまでイヤ〜な気分にさせられますし、人間関係もギスギスします。
そやからケチな人からは人が離れていきますね。
まとめると、始末は自分や身内に対してもったいないを共有して無駄にせんと使い切ること
ケチは、支払いや人づきあいのお金をもったいながって、出すべきお金をしぶること
どっちがキレイなお金の使い方であるか、言わなくてもわかるでしょう。
お金の使い方を間違うと、人が離れていきます。
わたしは母からお金はきれいに使いなさいと教えられました。
母から教わったわたしの宝物です。
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始末する心はハレとケにも通じる
日本の暮らしにはむかしから「ハレとケ」という、日常と非日常のメリハリがありました。
毎日のくらしは同じような日々が繰り返されるのですが、その中にお祭りやお正月、お盆といった非日常がある。
日々の暮らしはぜいたくをつつしみ、お祭りやお正月にはごちそうを食べて過ごす。
ハレは「晴れ」であり、「晴れの日」ともいいます。
結婚式や成人式など、おめでたい日のこと。
「ケ」はふだんの日常。
毎日が「ハレ」であったら、晴れの日のありがたみが薄れますし、
毎日が「ケ」であれば、楽しみがなくつまらない。
ケの中にときどきハレがあることで、メリハリがつき、くらしのアクセントにもなっていました。
なので、毎日のくらしはあるもんで食べて、あるもんを着て、つつましやかに暮らすのが「始末する」ことです。
始末は元祖SDGs、サスティナブル!
SDGSやサスティナブルなくらしが見直されています。
衣料品の大量生産、大量廃棄や食品ロスも問題になっています。
そう、勘のいいあなたはもうお気づきでしょう、
始末するとは元祖、サスティナブルな考え方であることに!
わたしが子どもだった頃は、新しい洋服も欲しい、おしゃれもしたいと思っていましたが、
母はいつもいつも洋服を買ってくれるわけではありませんでした。
でも、発表会など特別なときに洋服屋さんで仕立ててもらうワンピースやスカート
今になって、母のしつけという愛情だったのだとしみじみ思います。
最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!
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