かねてより一度は観たいと切望(せつぼう)していた能・翁を観てきました。
この記事では、翁の鑑賞記をお届けします。
【能・翁初鑑賞記】感想と見どころ
揚幕(あげまく)から行列をなして現れた演者の列。
出だしからしていつもの能の演目とはまったく違っていて新鮮でした。
この日の翁は、宝生流二十世宗家家元、宝生和英(ほうしょうかずふさ)さんでした。
30代という若さながら家元らしい落ち着いた所作で堂々と翁を演じられました。
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舞台で面をつけるのは、200以上ある能の演目の中でも「翁」だけです。
舞台上で演者は「神」になるのです。
地謡座も囃子方もみんな小さい冠をちょこんと頭に乗せ、衣装もいつもの紋付ではなく色柄の入った華やかなものでした。
裾を引きずる衣装でしたから正装中の正装なのでしょう!
今までに見たことのない正装感と出演者勢揃い!
豪華で見応えのある、新年にふさわしいおめでたさ満載の舞台でした。
2021年が希望に満ちた年になりそうな予感がしましたよ。
※鑑賞記録:2021年1月11日(月)1月定例能 加賀宝生金沢能楽会 石川県立能楽堂
『翁』では舞台の上で面をつける
ここからは、2021年3月12日に皇居外苑で演じられた『翁』の模様を少しだけお伝えしますね。
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実際の能の舞台を記録することは難しいのですが、テレビで放映された映像をシェアさせていただきます。
舞台の上で面をつける珍しいシーンをごらんください。
能にして能にあらず、といわれるわけは?
翁には、通常の能のようなストーリーはありません。
天下泰平と国土安寧を祈る「祈り」の舞です。
今のかたちの能狂言になる以前の、猿楽の土着性を色濃く残しています。
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とうとうたらりたらりら〜と唱える謡(うたい)は、神主さんが上げる祝詞(のりと)のようでもあり、呪文のようにも聞こえます。
翁は神聖な儀式の意味合いもあるので、舞台にはしめ縄が張り巡らされ、上演中は出入り禁止です。
能が祈りの芸能といわれるわけはここにもあるのではないかと思いました。
能のもっとも古いかたちをとどめているのが「翁」なのです。
翁ならではの決まりごととは?
「翁」を舞うためにはいくつかの決まりごとがあります。
精進潔斎(しょうじんけっさい)
翁を舞う前(昔は100日といわれていた)には、4本足の動物を口にしない、殺生を禁ずるおきてがあります。
今は時代も変わり、1か月とか3.5.7日は精進するなども多いようです。
流派や個人でも違い、まったく精進しないこともあるようです。
体の細胞をよみがえらせて、神事に臨む意味があります。
別火(べっか)
神に関わる儀式などで、一定期間家族とは別の火で煮炊きをしたり、暖房の火をとったりすること。
俗世間と距離を置いて、穢れ(けがれ)が移らないようにという意味で別火(べっか)をします。
これも現代では厳密に守ることは難しくなっているようです。
決まりごとは他にもあります。
一挙一投足、足の出し方、進み方が決まっています。
感情は挟まずに(さしはさまずに)祈る。
「翁」に関しては、演じるというより、「祈る」演目だと、能楽師の方はお話されていました。
白い翁は白色尉、黒い翁は黒色尉、千歳(せんざい)は若者の象徴
「翁」では、能役者と狂言役者が一度に舞台に出ます。
まず、千歳(せんざい)が翁の舞う場所を払い清める舞を舞います。
次に白い翁面をつけた能役者が祝詞(のりと)を上げ、祝いの舞を舞います。
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それから、黒い翁面をつけた狂言役者が、鈴を鳴らしながら軽やかに飛び跳ね踊ります。
腰をかがめて種をまく様子をしたり、鈴を鳴らして鳥を追い払う様子を見せたり、農耕儀礼の田楽踊りを連想させます。
黒い翁面は、農作業で日焼けした老人の神を表しています。
能・翁は新春の1月に公演されるほか、お祝いごとの際にも上演される
演目「翁」は、新春の初めの演目として上演されている能楽堂が多いようです。
また新しい能楽堂を建てたときの舞台開きのお披露目の演目としても舞われることがあります。
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最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!