石川県立能楽堂では7月18日、約5か月ぶりに能楽の上演が再開しました。能楽ファンとして毎日WEBをチェックしながら、この日が来るのを待ちに待っていました。
私は8月1日と8月15日の「観能の夕べ」を鑑賞したのですが、コロナ対策で観劇のしかたや入場の手続きがどう変わったかをお知らせします。
入場時のコロナ対策〜入場のしかたも新しい生活様式に!〜
マスク必須
入場の関所でマスクチェックがあります。マスクをしていない人は入場できません。ウィズコロナ時代ではもはや常識ですね。
行列禁止
以前は、お目当ての席を確保するのに開場前に行列ができるのが普通でしたが、コロナ時代に行列はできませんし、させません。開場は以前と変わらず開演の1時間前ですが、客席を半分に減らして人数制限をしていることもあり、以前のような混雑は見られませんでした。
入場時にサーモで検温
非接触のサーモ検温器で一瞬で検温完了!平熱であれば通過できます。
消毒
消毒液を手指に刷り込みます。
チケットを提示
チケットを見せます。
コインロッカー使用不可
コインロッカーは使えません。手荷物はコンパクトにしてお出かけください。観光の方は前もって駅などのコインロッカーをご利用ください。
ロビーも使用不可
密回避のため、ロビーも使えなくなっています。
ひざ掛けの貸し出しなし
感染予防のため、ひざ掛けの貸し出しもなくなりました。
座席のコロナ対策〜座席数を半分に、交互にしてソーシャルディスタンスを確保!〜
クリアファイルのある席が着席可能
使える席にはプログラムの入ったクリアファイルが置いてあります。座席は交互に着席できるようになっています。市松模様の座席配置となっており、これまでのように前列の方の頭に隠れて舞台が見えづらいこともありません。能楽師の方や運営側には申し訳ないのですが、見えやすくて座席も広々と鑑賞できます。
最前列は使用禁止
能楽師の方の飛沫防止のため、最前列はすべて使用できなくなっています。
座席の移動禁止
これも移動による接触を避けるため、一度着席した席は変えてはいけないとアナウンスがありました。
熱中症対策の水分補給、座席でOK
以前であれば、座席での水分補給はNGでしたが、今はロビーも使えないし、むやみに席を立ってはいけない状況なので、OKとされています。
演者のコロナ対策〜謡(うたい)、笛など飛沫対策としてアクリル板を設置〜
謡や笛の演者は、飛沫対策にアクリル板で仕切られています。
狂言師や能楽師の役者さんは、さすがにマスクというわけにはいかないのでしょう。それでも大変神経を使っておられる様子が伝わってきます。8月15日の狂言「太刀奪い」の狂言師炭光太郎さんの演技は、心なしか口の開け方がいつもより控えめのように感じました。炭光太郎さんの狂言は、能楽堂全体に響き渡るハリのある声が特徴なのですが、コロナ時代の狂言は試行錯誤なのでしょう。
それでも能狂言を観に舞台に足を運べるようになっただけでも、コロナと共存せざるを得ない次のステージに移ったと言えると思います。これからもコロナに負けず上演できるよう、応援したいと思います。
運営側のその他のコロナ対策
換気
能と狂言の間には、館内の3箇所の扉を開放して空気の入れ換えをしていました。
密を避ける
退場の際の混雑を避けるため、席ごとの退場を係員が誘導していました。
トイレのふたは閉めてから流すようにとの注意書き
菌の飛び散りを防ぐため、ふたを閉めてから流すようにと注意書きが貼ってありました。最近の様式トイレではもともとふたのない機種も設置されているところが多くなりましたが、コロナ対策ではトイレのふたも注意ポイントになるのですね。
万が一に備えて個人情報の提示
万が一、公演で感染が出た場合に備えて、住所・氏名・連絡先の記入・提出が必須となりました。一定期間保管し、感染が確認されなかった場合は破棄すると記載されていました。
コロナ時代の能狂言鑑賞まとめ
私が鑑賞した両日とも観客の入りは、半分にした座席がほぼ埋まっている状態でした(満席)。私と同じように能楽ファンの方は、この日を待ちわびていたのでしょう。コロナウィルスの感染拡大防止による演劇界の公演自粛中は、能楽界もユーチューブで演目を配信するなどできる努力を重ねられてきました。が、能楽はやはり場の空気や雰囲気、衣装の衣擦れ(きぬずれ)のかすかな音など五感で感じる伝統芸能です。
コロナ対策できゅうくつに感じることは、観客側としては皆無(かいむ)に等しいです。むしろ左右が空席なのでゆったり鑑賞することができ、不便どころか申し訳ない思いさえしています。能楽ファンの方もきっと私と同じように感じておられることと思います。
不特定多数の人が集まる公演会場では、新型コロナウィルスの感染のリスクは避けられません。避けられないから少しでもリスクを減らせるよう整備されたガイドラインを守ることは、観客である私たちの義務だと思います。マスク着用や手洗い、誘導に従っての入退場などを守って安全に鑑賞したいと思っています。やっと再開できたのですから、観る側も感染リスクの回避を意識した鑑賞姿勢を守り、ウィズコロナ時代の能楽鑑賞を楽しみたいと思います。
運営側と役者さんの大変なご苦労を思えば、観客が半分で満席にしなければならないのは申し訳なく思います。そのためにも、能楽堂に足繁く通い、これからも私にできるかたちで能狂言を応援していきたいと思っています。