無表情といわれる能面ですが、目を凝らしてすみずみまでながめてみると、意外な工夫がされていて驚きます。
この記事では能面に隠された秘密と、喜怒哀楽の表現の工夫についてお伝えします。
表情の豊かさは、女優の幅を広げる
俳優さんの中には不幸顔といわれる女優さんがいます。
ある意味ほめ言葉なのでしょうが、たまたま役柄と女優さんの個性と演技がマッチしてそのイメージがつきまとっています。
イメージを打ち破るべく、これまでと違った役柄に挑戦して、新しい境地を切り開くのは、女優さんの努力と実力です。
不幸顔から幸せ顔までさまざまな表情ができれば、役柄も広がるでしょう。
表情だけではなく、女優はその体を通してさまざまな人生を生きてみせるのが仕事です。
角度によって表情を変える能面
能も同じで、能楽師は役柄になりきり、その体をとおして喜び、悲しみ、憂い(うれい)、恥じらい、さまざまな感情を表現します。
しかし、女優と違うのは生身の顔ではなく「仮面」をつけていること。
面は喜怒哀楽を表現できるのでしょうか。
能を見たことのない人でも、能面はどこかで目にしたという方も多いと思います。能面と聞いてどんなもんをイメージされますか?たぶん、代表的な女面ではないでしょうか。うりざね顔におちょぼ口、空(くう)を見据えたような視線。[…]
一般に無表情と思われている能面ですが、実は、想像以上に表情をもつことは、能を見慣れている方は感じておられることと思います。
面を動かすことによる感情表現の主なものをご紹介します。
- 面を上に向けることを「テラス」・・・喜びの表現
- 下に向けることを「クモラス」・・・憂い(うれい)とまどい お礼
- 下に向けて手を目の前に「シオル」・・・泣いている表現
- 面をゆっくり左右に動かしあたりを見回す「ツカウ」・・・風景を見ている表現
- 面を動かし止める「キル」・・・激しい感情の表現(歌舞伎でみえを切る表現と似ています)
動きによって多彩な表情をみせる能面は、どのような表情も演じられることから「無限表情」ともいわれます。
能面は無表情じゃない?
このように無表情と思われている能面ですが、表情を「作り出せる」ことがわかっています。
美術館のガラスケースの中に陳列されている能面は、確かに無表情かもしれませんが、
能楽師が面(おもて・・・能の面はおもてといいます)をかけることによって能面は表情を持ち、いきいきと動き出すのです。
能面が怖い! 能面の意味とつける理由 女の人生を映した女面の深い悲しみ
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モデル顔の条件は左右対象で均整のとれたシンメトリーな美、能面は左右非対称の美
西洋では庭の造作や建物などでも左右対称(シンメトリー)の美を重んじます。
一方、日本ではゆがんだものに美を見出した千利休の侘び寂びのように、不均等であったり欠けているものにも美を見出しました。
モデルや女優さんは、鼻を中心として左右対称の均整のとれた顔立ちが、美しさの基準とされています。でもふつう多くの人間の顔はわずかに左右非対称にできています。
能面は美人なのか?小面は美しいのか?細部に宿る美の秘密に迫る!
能面を言い表す、「能面のような顔」ということばがあります。一見無表情に見える能面を怖いと感じる人も少なからずいるようです。わたしも能をよく知らないときは、能面を不気味だと思っていました。しかし、能に親しむようになって[…]
よく子どものころにやりませんでしたか?(私だけかな?)
私は三面鏡に自分の顔を写し、左右で別人のようになる顔をながめて、不思議な気持ちになったものです。
シンメトリー(左右対称)な顔は芸能人になれる条件といわれていますが、一般の人間はそうでない場合のほうが多いのです。
しかし、アシンメトリー(左右非対称)の顔のほうが、完璧な美人よりも人間味があり親しみが持てるともいわれています。
能面、計算されたゆがみがつくる人間らしさ
さて、能面も左右非対称にできていることをご存じでしょうか。よく見てみると、目の高さや口もとの開きぐあいなどが左右で少しずつ違っています。
無表情といわれる能面に表情を与えるための工夫ではないでしょうか。
能面を彫る人を能面師(のうめんし)といいますが、能面師のセンスと計算で、生きた能面が作り出されます。
能を見たことのない人でも、能面はどこかで目にしたという方も多いと思います。能面と聞いてどんなもんをイメージされますか?たぶん、代表的な女面ではないでしょうか。うりざね顔におちょぼ口、空(くう)を見据えたような視線。[…]
能の魅力とは?簡単にわかりやすく!【誰でもわかる初心者向け徹底解説】
伝統芸能の中でも能は、とっつきにくくハードルが高く感じられるようです。まして能楽堂に出向くのは気おくれしてしまう人も多いかと思います。むかしのことばで話すので理解しにくく高尚(こうしょう)なイメージがあるのは否定できません。[…]
それでは
最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!