落語って一度は生で見てみたい大人のたしなみ、娯楽ですよね。
落語の舞台演出は、噺家(はなしか)が座る高座(こうざ)とざぶとん、机、とシンプルの極み。
伴奏も三味線や太鼓のみ。
一人で高座に上がり、話術で聴かせる古典芸能です。
テレビの司会でも活躍する落語家・立川志の輔さんは、チケットがとれない人気の落語家です。
それもそのはず、立川志の輔さんの落語はわかりやすく面白いのです。
広告業界の営業マンから落語家になった異色の経歴の持ち主です。
いろいろな世界を経験して回り道してたどり着いた落語家の世界、その人柄には経験がにじみます。
あたたかい人柄は、観客を魅了する話術とともに人気です。
立川志の輔さんの創作落語を元にした映画「大河への道(伊能忠敬物語)」は2022年5月20日(金曜日)全国ロードショー。
この記事では、立川志の輔さんの落語の感想と、映画化が決定した創作落語「大河への道(伊能忠敬物語)」について書いています。
立川志の輔の創作落語「伊能忠敬物語〜大河への道〜」が映画化へ
立川志の輔さんがライフワークとしている、東京・渋谷のパルコ劇場での1か月のロングランのお正月公演。
2006年から続けているライフワークの一環です。
落語と演劇とが融合した大がかりな舞台で見応えがあります。
もともと立川談志に弟子入りして落語家になった立川志の輔さんですが、立川談志さんが生粋の江戸っ子で寄席育ちの落語だったのに対し、
立川志の輔さんは地方出身(富山)で劇場育ちの落語家というバックグラウンドがあります。
で、新作落語をお正月公演の1か月、パルコ劇場で披露しています。
2011年に初公演されて以来、繰り返し上演されてきた「伊能忠敬物語〜大河への道〜」は、立川志の輔さんの完全オリジナル作品。
50歳を過ぎてから測量術や天文学を学び、日本の海岸線を歩き日本地図を作った伊能忠敬の仕事人としての人生を落語にして伝えたいという思いからでした。
江戸時代、50歳といえばすでに老人の年齢。
老境にさしかかってから学問を学び、日本中を足で歩き、きわめて正確な日本地図を作った伊能忠敬のすごさはもっと知られるべきだ、と。
立川志の輔さんのこの新作落語「伊能忠敬物語〜大河への道〜」を見て感動した俳優の中井貴一さんが、ぜひこの作品を映画にしたいとオファーしての映画化が決定しました。
落語を映画にするのですから、三次元的ないえ時空を超えた四次元的な広がりと壮大なロマンがスクリーンで再現されることでしょう。
2022年5月20日(金曜日)封切りです。
立川志の輔の落語は面白い!

シャンシャンという三味線のBGMに乗って舞台に姿を見せた志の輔さん。
萌葱色(もえぎいろ)の羽織をさらっと着こなして、さすが羽織姿が板についています。
パステル調の色味がお顔写りがよく、舞台に映えます。
まくらと言われる導入部分から噺(はなし)が始まりました。
世間の動向や、ニュースで話題になっていること、コロナウィルスの現状などを情感たっぷりに語ったあと、本題の演目へといざなわれます。
枕と本題とがゆるやかにつながり、いつまにか演目に引き込まれているという具合に。
立川志の輔さんの落語は、身振り手振りが大きいのが特徴です。
声色、声の大きさ、抑揚などを巧みに使い分け、グイグイ世界に引き込まれていきます。
演劇的なおもしろさがあります。
立川志の輔さんは若い頃、劇団で身を立てようと志していたことがあり、その頃の演劇の下地が生きている、と本人もおっしゃっています。
落語では、複数の登場人物が出てきますが、声色の使い分けで人物の演じ分けもわかりやすくて楽しめました。
人間のドロドロした部分やブラックな部分なども、ジョークに昇華させてサラリと表現するあたりも小気味良いです。
立川志の輔の世界観に人柄がにじむ!
立川志の輔さんの落語は、セットのない舞台に江戸の町や長屋の風景が見えたりします。
落語は想像力で聴くものとは言われますが、脳内にバーチャルな世界を作り出してくれるのは、立川志の輔さんの語り口がなせる技でしょう。
聴いている人それぞれが違う風景を脳内で見ているのですから、そう考えると不思議な芸能ですね、落語って。
落語家とは、言葉と身振り手振りで噺(はなし)を伝えるのですから、表情や声、人柄が一緒になってひとつの世界観を舞台に形成します。
能や狂言と少し違うなと思う点は、人柄がそのままダイレクトに伝わってくるところです。
なぜなのか?
登場人物になりきっているときは一人称の視点ですが、全体を包括する三人称の視点に、人柄がにじみ出るからだと、わたしは思います。
立川志の輔さんの温厚で厚みのある人柄が、落語の世界観を作り上げていました。
立川志の輔は落語家としては異色の経歴!

遅咲きの落語家、立川志の輔さんは、回り道してやりたいことに行き着いたと語ります。
落語に傾倒した大学時代、卒業後は演劇の世界へも足を踏み入れました。
しかし、俳優で稼げるあてもなく将来に迷っていたとき、飲み屋で知り合った人から広告業界に誘われました。
世をときめく糸井重里さんのコピーの手法などを目の当たりにして、表現すること、作り上げることは楽しかったし刺激的だったと語ります。
ディレクターとしてCM制作にも携わりました。
しかし、一方でどこかで落語に対する思いも捨てきれなかったのだと気づきます。
俳優、広告、クリエイティブな世界を経験して、人生の転機を自ら切り開きます。
広告会社を退職して、落語家になると腹を決め、立川談志さんに弟子入りしました。
30歳までに何者かになるんだという信念を持って。

初めから落語家を目指したわけではなく、回り道して落語の世界に導かれました。
だれもが揺るぎない人生の目標を持っている人ばかりではありません。
経験する中で目標が変わったり、進む方向を軌道修正することは、ごくふつうのことです。
自分の心に素直になったら、やりたいことがわかった。
経験はすべて、落語家の仕事に生きていると立川志の輔さんは話しています。
広告にしても落語にしても、見る人に何かを伝えるという意味では同じ。
俳優、広告といろんな業界を経験したからこそ、見る人に伝わる落語、楽しんでもらえる落語を、とひとりよがりでない視点を持てるのだと思います。
実際、立川志の輔さんの落語はとても人柄が現れています。
無駄な経験なんてないんですね。
経験は蓄積されて熟成され、発酵して、また別の分野でアウトプットされます。
目の前のことを一生懸命やってきたから今の立川志の輔さんの活躍があるのでしょう。
立川志の輔の新作落語「こぶとり爺さん」は笑える!
こぶとりじいさんは、おなじみ昔ばなしを元ネタに、こぶとり爺さんの教訓を深堀りするお話です。
登場人物で1人目に出てくるのが正直者のおじいさん、こぶがあります。
2人目に出てくるのは意地悪なおじいさん、こぶがあります。
正直者のおじいさんは山に出かけ、鬼の宴会で踊りを披露すると鬼はたいそう喜び、明日も踊りを見せにきてほしい。
ついてはこぶを預かっておくと言って鬼にこぶをとられます。
正直者のおじいさんは、邪魔なこぶをとってもらって喜び勇んで家に帰ります。
隣に住む意地悪なおじいさんが正直者のおじいさんのこぶがなくなっているのを聞き、自分も同じようにと山へ出かけていきます。
鬼の宴会が始まり、踊りの輪の中に入って踊りを披露します。
ところが、鬼たちはお爺さんの踊りがあまりに下手なため怒ってしまい、こぶを返すといってほっぺたにつけられます。
意地悪なおじいさんはこぶがふたつになってしまいました。
さて、意地悪なおじいさんはどんな悪いことをしたのでしょう?
踊りが下手なのが悪いこと?
こぶとりじいさんの教訓って何?
こんなお話です。
文字に書いてしまえば、おかしくも面白くもないんですが、立川志の輔さんが落語でやるとめっちゃ笑えます。
おかしすぎて、涙が出ます。
ぜひ見る機会があれば、生で見て笑ってください。
笑いは人間に与えられた能力です。
いやぁ〜
立川志の輔さん、いい歳の重ね方、してはりますなぁ
ステキです。
これからも応援しています。
最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!