トリエンナーレとは、イタリア語で、3年に一度開かれる美術展覧会のことです。
石川県の能登半島・珠洲市で2017年、奥能登国際芸術祭2017が開かれました。
この記事では、2017年9〜10月、能登半島の先端にある珠洲(すず)で開催された奥能登国際芸術祭2017の模様をレポートします。
トリエンナーレ珠洲2017【奥能登国際芸術祭2017】レポート
能登半島の先端は奥能登と呼ばれます。
で、奥能登国際芸術祭というわけです。
奥とは中心から離れているという意味で、日本海に突き出た能登半島の中でもいちばん先端にあたります。
珠洲は「さいはて」ともいわれ、そこより先は海という先っぽです。
昭和の時代には陸の孤島ともいわれていました。
2017年に開催されたトリエンナーレ珠洲では、地元住民とアーティスト、サポーターとの交流も、成功を支えたひとつの要因ともいわれています。
過疎化が進む奥能登で、国際芸術祭が成功裏(せいこうり)に終わったことで、地元民たちも地域を見つめ直すきっかけにもなりました。
ずっと住んでいてあたりまえと思っていたことが、本当は豊かなことだったと気づいたとの地域住民の声が聞かれたそうです。
外部の人との接触は、ものの見方を広げてくれますね。
もちろん作品に魅力があったからこそ、目標を上回る動員を得られたのだと思います。
1日ではとても足りず、すべての作品を回れなかったのですが、どの作品にも共通して感じられたのは 失われゆくものへのオマージュ
豊かな文化が残るさいはての地で、今は過去となったにぎやかな暮らし、モノ、人々の息づかいが聞こえてくるようでした。
鑑賞した作品をもとに解説しますね。
奥能登国際芸術祭2017 失われゆくものへのオマージュ
能登半島の先端に位置する珠洲市は、過疎化がすすむ「さいはて」です。
しかし、むかしは栄えていたのだとか。
むかしの物流は海路がメイン、海からもたらされる富(とみ)がこの土地を豊かにしたのです。
20年ほど前までは、半島の先っぽまで鉄道も通っていました。
作品名:なにか他にできる




作品名:なにか他にできる
作家:トビアス・レーベルガー(ドイツ)
廃線になった線路に残された車両、時が止まったかのように雑草に覆われている。
寂しげな表情。
何か言いたいようにも見える。
望遠鏡をのぞくと、終着駅の蛸島駅(たこじまえき)が見える。
その先には、作者のメッセージが!!!
過疎化、地方の未来を象徴しているかのようなメッセージ性を帯びた作品。
この作品は、2017年から常設展示されていて、奥能登国際芸術祭2021+でも鑑賞することができます。
作品名:小海の半島の旧家の大海


作品名:小海の大海の旧家の大海
作家:岩崎 貴宏(日本)
海からもたらされる利益で、富を築いた家もあった。
一家3世代がにぎやかに暮らし、大きなお屋敷には立派な建具がぜいたくに使われている。
海からの恵みである塩を部屋の中、いや家の中じゅうに敷き詰め、大海を表現した作品。
まるで枯山水のようだ!
箱庭のようにも見える。
塩の大海に浮かぶ、ガラスケースの日本人形。
日本家屋の記憶がよみがえる。
漁船はなんと刺身トレーでできているではないか(笑)
今では、この家の住人はどうなったのか?
そこはかとないかなしみと一抹の寂しさ、過去の記憶が交錯し、胸をしめつけられる作品。
作品名:サザエハウス



作品名:サザエハウス
作家:村尾 かずこ(日本)
珠洲市中から25,000個のものさざえの殻を集めてつくったというサザエハウス。
外壁にびっしり貼られたさざえは、童話に出てくるおうちのよう。
中に入ると、これまたおもむきがガラッと変わる。
母親の胎内(たいない)のような不思議な空間。
真っ白で、すべすべ、やわらかく包まれる感じ。
民家の軒先によく見られる蜂の巣もさりげなくこしらえてあって、リアリティがある。
で、なんでさざえなのかって?
珠洲では、お祭りのときのごちそうにさざえがよく食卓に乗るらしい。
もちろんふつうに普段でも食べる。
ちょっと海行ってとってくるわ〜ってな具合に。
自給自足のくらしが根付いているのだ。
作品名:神話の続き





作品名:神話の続き
作家:深澤 孝史(日本)
海とともにくらしてきた奥能登の人にとってむかしから、神様は海の向こうから来るものだった。
海の向こうからやってくるものを「まれびと」といい、丁重(ていちょう)にもてなした。
神様も海の向こうからやってきた。
波に乗ってたどり着いた仏像が今でも、珠洲のいつくかの神社にまつられている。
現代の「まれびと」はどうであろうか。
プラスチック、レジャーのゴミ、ペットボトル、漁業で使うブイ。
漂流物は人間の手に追えなくなり、ついには漂流物を神様としてまつったのがこの神社というわけ。
これらも神様なのだろうか。
環境破壊への警鐘と、希望と、アイロニー(皮肉)を込め、表現された現代の海の神様。
受け止め方は人それぞれ。
そう、現代美術は、解釈が人によって異なるからおもしろい。
現代美術に限らずだが、美術は見る人それぞれの受け止め方があっていい。
こう見なければ、なんて考える必要などない。
感じたまま、見たままに、自分なりの解釈をすればいいのだ。
石川県珠洲市へのアクセス
金沢からレンタカーを借りて2時間ちょっと。
東京から能登空港まで空の便で1時間。能登空港からレンタカーで30分。
石川県珠洲市の町並み
珠洲はの能登半島の先端に位置するだけあって、空気が違いました。
突き抜ける感じ、とでもいえばいいのか気持ちのよい場所でした。
よどみがなく、「気」がさらさら流れる感じ。
風が通り抜け先端感が感じられ、開放的な気分になる場所でした。
珠洲にはよそではちょっと見かけない珍しい家並みが並んでいます。
屋根の瓦(かわら)が黒く光っているのです。
お日様の光を反射してつやつや光る瓦は、能登瓦(のとかわら)というのだそうです。
しかも、能登瓦、地域の家々がまるで申し合わせたように同じ黒い瓦屋根が連なっているのです。
風致地区とかで規制がかかっているわけでもないのにです!
黒光りする能登瓦は、地域で受け継がれてきた資源だったのだとか。
黒い瓦屋根の連なる家並みは、ノスタルジーただよう懐かしい気分にさせてくれました。
奥能登国際芸術祭2020+(2021)の詳細
奥能登国際芸術祭2021の開催は新型コロナの影響で、一年遅れで下記の予定で開催されます。
会期:2021年9月4日(土)〜11月5日(土)
※毎週木曜日、屋内展示休館のため見学不可
屋外展示は見学できます
会場:石川県珠洲市全域
作品鑑賞パスポート:
種別 | 当日券 | 前売券 |
一般 | 3,000円 | 2,500円 |
大学生 | 1,200円 | 1,000円 |
小中高校生 | 500円 | 300円 |
珠洲へ行ったら、珠洲最強のパワースポット、須須神社!こちらに詳しくまとめています↓
わたしが初めて能登半島の先端にある珠洲(すず)を訪れたのは、30年も前になります。第一印象は、風が通り抜けて気持ちのよい場所!すがすがしくて、よい気が宿っている、そんな空気を感じました。この記事では、石川県の能登半島[…]
最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!