能や狂言に登場する言葉や、美意識・思想をまとめた辞典です。
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基本・世界観
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 式楽 | しきがく | 公的儀式としての芸能 | 江戸時代の幕府の公式芸能。儀式の際に上演された。能狂言は幕府・武家の式楽だった。 | |
| 幽玄 | ゆうげん | 奥深く気品ある美 | 余韻や気配で感じさせる日本独特の美。 | |
| 余情 | よじょう | 言葉にしきれない余韻 | 観客の心に残る“あと味”の美しさ。 | |
| 花 | はな | 観客を魅了する芸の魅力 | 年齢や経験で変化する魅力 | |
| 風姿 | ふうし | 姿や振る舞いの美 | 立ち居振る舞い全体の印象 | |
| 真行草 | しんぎょうそう | 格式の段階 | 正式・中間・略式の美の区分。 | |
| 序破急 | じょはきゅう | 緩→展開→急の構成 | 能だけでなく日本芸能全体の基本構造。 | |
| 離見の見 | りけんのけん | 自分を客観視する視点 | 観客の目で自分を見る意識。 | |
| 時分の花 | じぶんのはな | 年齢に応じた魅力 | 若さだけでなく年齢ごとの良さを活かす | |
| 真の花 | まことのはな | 本質的な芸の魅力 | 修練によって得られる持続的な花。 | |
| 初心忘るべからず | しょしんわするべからず | 各段階の初心を忘れない | 芸事を始めた頃の未熟さを忘れずに、常に学び続ける姿勢 | |
| 老木の花 | ろうぼくのはな | 熟練による円熟の美 | 年を重ねてこそ現れる深い魅力。 | |
| わび・さび | わびさび | 質素で静かな美 | 不完全さや古さの価値。 | |
| 一期一会 | いちごいちえ | 一度きりの出会い | 舞台の一回性を大切にする考え。 | |
| 無常観 | むじょうかん | すべては移ろう | 仏教的な世界観。 | |
| 禅 | ぜん | 精神集中と悟りの思想 | 能の精神性に大きな影響。 | |
| 無心 | むしん | 雑念のない境地 | 自然体で演じる理想状態。 | |
| 空 | くう | すべては実体がない | 執着を離れる仏教思想。 | |
| 中道 | ちゅうどう | 偏らない生き方 | 極端を避ける仏教の基本理念。 | |
間 | ま | 時間や空間の余白 | 沈黙も演出の一部 | | | 余白 | よはく | 空間の美 | 観客の想像力を引き出す | |
| 引き算の美学 | ひきざんのびがく | 削ぎ落とす美 | 本質を際立たせる考え方 | |
舞台・構造
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 能舞台 | のうぶたい | 能狂言が演じられる舞台 | 室町〜江戸時代は屋外にあり、神社や武家屋敷に設置されていた。 | |
| 能楽堂 | のうがくどう | 専用の上演施設 | 明治以降は建物内に舞台が設けられ、屋根付き舞台の形式が残った。 | |
| 鏡板 | かがみいた | 舞台奥の松が描かれた板 | 常緑の松が描かれ、神聖な空間を象徴する。 | |
| 松 | まつ | 鏡板に描かれる松 | 長寿や永続性の象徴。 | |
| 竹 | たけ | 舞台正面脇に描かれる若竹 | 若さや生命力の象徴として配置される。 | |
| 橋掛かり | はしがかり | 登場通路 | 異界と現世をつなぐ象徴的な空間。 | |
| 一の松 | いちのまつ | 舞台に最も近い松 | 登場人物が舞台へ近づいた位置の目安。 | |
| 二の松 | にのまつ | 中央の松 | 登場途中の位置を示す目印。 | |
| 三の松 | さんのまつ | 最も奥の松 | 異界から現れる起点を象徴。 | |
| 見所 | けんしょ | 観客席 | 観る側も含めて舞台が成立するという思想がある。 | |
| 揚げ幕 | あげまく | 橋掛かり入口の幕 | 異界との境界であり登場・退場を象徴する。 | |
| 貴人口 | きにんぐち | 身分の高い人物用の出入口 | 非常時には役者の出入りにも使われる。 | |
| 鏡の間 | かがみのま | 舞台裏の控え室 | 面をつけ精神を整える神聖な場所。 | |
| 切戸口 | きりどぐち | 舞台脇の小さな出入口 | 地謡や後見が出入りする実務的な通路。 | |
| 白洲 | しらす | 白砂利の敷かれた空間 | 屋外舞台時代の名残で、神聖性を示す。 | |
役柄
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
| 太郎冠者 | たろうかじゃ | 狂言の代表的な役。庶民の従者として登場する | ユーモラスで人間味あふれるキャラクターで、狂言の笑いを担う中心的存在 | |
| 次郎冠者 | じろうかじゃ | 狂言の従者役。太郎冠者の相棒として登場する | 太郎冠者との掛け合いで物語を盛り上げる役割 | |
| 主人 | しゅじん | 狂言に登場する主人役。従者を使う立場の人物 | 権威を持ちながらも滑稽に描かれることが多い | |
| シテ | して | 能の主役。物語の中心となる人物や存在 | 多くはこの世ならぬ存在で、面をつけて演じられることが多い | |
| ワキ | わき | 能の脇役。シテを引き立て物語を進行する役 | 僧侶や旅人として登場し、観客の視点に近い役割を持つ | |
| ツレ | つれ | 能の同行者役。主役や脇役に付き添う人物 | 場面の補助や関係性の表現に用いられる | |
| 前シテ | まえじて | 能の前半に登場する主役 | 人間の姿で現れることが多く、後半への伏線となる | |
| 後シテ | のちじて | 能の後半に登場する主役 | 正体を現し、本来の姿で登場する存在 | |
能面
能では、役柄ごとに用いる能面が決まっており、面によって人物の性格や感情が表現されます。能面は、役の内面や感情を象徴的に表現する仮面であり、角度や光によって多様な表情を見せるのが特徴です。
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 面 | おもて | 仮面の総称 | 役の本質を表す | |
| 能面 | のうめん | 能で使う仮面 | 角度で表情が変化 | |
| 小面 | こおもて | 若い女性の面 | 角度で表情が変化する代表的な面 | |
| 若女 | わかおんな | 若い女性の面 | 穏やかな表情 | |
| 増女 | ぞうおんな | 成熟した女性の面 | 落ち着いた女性像 | |
| 深井 | ふかい | 中年女性の面 | 悲しみを秘める表情 | |
| 曲見 | しゃくみ | 苦悩する女性の面 | 強い感情表現 | |
| 般若 | はんにゃ | 嫉妬に狂った女性の鬼の面 | 強い感情を象徴する面 | |
| 翁 | おきな | 神格化された老人の面 | 祝祭的な特別演目で使用 | |
装束
能の装束
能の装束は、役柄の身分や性格を視覚的に表現する重要な要素であり、豪華な織物や色彩によって人物像を際立たせます。
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 装束 | しょうぞく | 能の衣装全体 | 役柄や身分・性格を視覚的に表す重要な要素 | |
| 唐織 | からおり | 女性役の豪華な着物 | 華やかな文様で上品さを表現 | |
| 厚板 | あついた | 格式の高い衣装 | 主に男性役で使用される重厚な装束 | |
| 直垂 | ひたたれ | 武士の装束 | 武将や身分の高い男性役で使用 | |
| 水衣 | みずごろも | 軽装の衣装 | 僧や庶民など比較的簡素な役で用いられる | |
| 狩衣 | かりぎぬ | 貴族の装束 | 優雅な人物を表現する衣装 | |
| 長絹 | ちょうけん | 女性役の上着 | 軽やかで優美な印象を与える | |
| 着付け | きつけ | 衣装の着装方法 | 動きやすさと美しさを両立する技術 | |
狂言の装束
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 狂言装束 | きょうげんしょうぞく | 狂言で用いる衣装 | 日常性を感じさせる写実的な衣装が特徴 | |
| 肩衣 | かたぎぬ | 袖のない上着 | 町人や武士など幅広い役で使用 | |
| 素袍 | すおう | 簡略化された礼装 | 動きやすく実用性のある装束 | |
| 半袴 | はんばかま | 丈の短い袴 | 軽快な動きを表現しやすい | |
| 足袋 | たび | 足に履く布製の履物 | 能は白足袋を用いるのに対し、狂言では卵色の足袋を用いる。狂言は笑いの芸能という性質上、能より格式を一段下げた位置づけとされ、その違いを色で表している。 | |
音楽
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 囃子 | はやし | 演奏全体 | 舞台の空気を作る重要要素 | |
| 地謡 | じうたい | コーラス隊が唄う唄 | ゆらぎのリズムで心地良くなり、幽玄の世界にいざなわれる | |
構成
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 番組 | ばんぐみ | 演目の組み合わせ | 一日の流れやテーマを構成する要素 | |
| 五番立 | ごばんだて | 能の基本構成 | 一日の演目構成の型。江戸時代、能狂言はまる1日をかけて上演された。 | |
| 脇能 | わきのう | 最初の演目 | 場を清める意味 | |
技法
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 型 | かた | 決まった動作 | 伝承された基本動作 | |
| すり足 | すりあし | 足を滑らせる歩き方 | 静けさを表現 | |
| 舞 | まい | 舞踊動作 | 象徴的な動きで表現 | |
| クセ | くせ | 見せ場部分 | 語りと舞の重要場面 | |
流派
能と狂言にはそれぞれ流派があり、芸風や表現に違いがあります。
能の流派
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 観世流 | かんぜりゅう | 能の最大流派 | 現在最も演者が多い主流派 | |
| 宝生流 | ほうしょうりゅう | 能の流派の一つ | 重厚で格式高い芸風 | |
| 金春流 | こんぱるりゅう | 能の古い流派 | 古典的で伝統色が強い | |
| 金剛流 | こんごうりゅう | 能の流派の一つ | 力強く豪快な表現 | |
| 喜多流 | きたりゅう | 能の流派の一つ | 洗練された美しさが特徴 | |
狂言の流派
| 用語 | 読み方 | 意味 | 補足 | リンク |
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| 大蔵流 | おおくらりゅう | 狂言の流派 | 京都を拠点に活動。親しみやすいお豆腐狂言が持ち味 | |
| 和泉流 | いずみりゅう | 狂言の流派 | 伝統的な表現が特徴 | |