野村萬斎さんと金沢との縁|家系図で曽祖父の出身地 石川県立音楽堂の邦楽監督に就任

狂言師の野村萬斎さんは、テレビやドラマでも大活躍です。

野村萬斎さんは金沢にゆかりがあるということで、石川県立音楽堂の邦楽監督も務めていらっしゃいます。

 

野村萬斎さんの曽祖父(ひいおじいさん)の代まで金沢在住で、加賀百万石の前田家のおかかえ狂言師でした。

この記事では、野村萬斎さんと金沢との縁、野村萬斎さんの邦楽監督記念公演の様子について書いています。

野村萬斎さんの家系図をたどると、金沢出身だった

金沢駅、向こうに見えるのは鼓門(つづみもん)。上には野村萬斎のポスターが。
金沢駅、向こうに見えるのは鼓門(つづみもん)。上には野村萬斎のポスターが。

 

野村萬斎さんの家系は、野村萬斎さんから見て曽祖父(ひいおじいさま)の時代まで金沢で暮らしていました。

加賀百万石といわれた金沢の前田家につかえる狂言師でした。

 

もともとは、酒造りを営む家に生まれた先代は、芸事好きが高じて狂言の道に進みました

江戸時代、金沢は加賀百万石といわれ、文化や芸能を手厚く保護した前田のお殿様が治めていました。

野村萬斎の先代は、前田家のお抱え狂言師として金沢で活躍していました。

 

当時の武士たちは各家ごとにおかかえの能楽師をかこっていて、式典やお祝い事のたびに能狂言を上演していたのです。

江戸時代、丸一日かけて能と狂言を5曲ほども上演していたといいますから、実に平和で時間的にもゆったりした時代だったのでしょう。

以後、4世まで野村萬斎の父方の家系は、金沢でくらしていました。

 

しかし、明治維新により、幕藩体制は崩壊。

これまで武家のパトロンとなって活躍できていた能狂言は、スポンサーを失います。

つまり、仕事をしたくてもお金を出してくれる武家がいなくなったのでは、狂言で食べていくことができなくなるということです。

明治維新による混乱で、武家の芸能だった能狂言が廃れてしまうかもしれない危機です。

野村家はこの危機にひんして、明治16年東京に移住して、廃れゆく能楽の再起を誓うのです。

東京に出てきた野村萬斎の先代は、幕藩体制の崩壊や戦後の混乱といった苦境に見舞われながらも、狂言を守っていきました。

地域の小学校での出前講座を開いたり、地道な活動で、スポンサーを失った狂言を自分たちの手で盛り立てていきました。

 

野村萬斎さんは石川県立音楽堂の邦楽監督に就任

野村萬斎金沢公演
野村萬斎さん、金沢公演

野村萬斎さんはそんな金沢との縁もあり2021年春、石川県立音楽堂の邦楽監督に就任されました。

野村家のルーツは金沢にあるので、金沢の文化発展に寄与していきたいと就任にあたっての抱負を述べられています。

 

珠緒
交通の便も発達し、東京から金沢までは乗り継ぎなしに新幹線1本で行けるようになりましたから、便利になりました。

 

石川県立音楽堂は、邦楽専用の邦楽ホールがあります。

朱色の邦楽らしい色のイス、舞台周りには伝統工芸の彫り物で縁取られ、桟敷席(さじきせき)もあります。

能舞台は設置されていないのですが、邦楽専用のホールです。

邦楽ホールは、金沢らしい雰囲気がありました。

金沢には前田家のお殿様が好んだという、ベンガラの赤い壁、朱壁(しゅかべ)があります。

お茶屋さんなんかで見かけるつやっぽい赤壁です。

邦楽ホールの壁が、朱壁に塗られていました。

艶っぽくて、華やかな色です。

石川県立音楽堂の邦楽ホール、前から7列目から舞台を見た様子
石川県立音楽堂の邦楽ホール、前から7列目から舞台を見た様子。翁の演目に合わせてしめ縄が宙に浮かんだ舞台美術。イスは背もたれが高く背中までホールドしてゆったり座れる。
石川県立音楽堂、邦楽ホール
石川県立音楽堂の邦楽ホール。舞台まわりは伝統工芸の細工が施されている。
石川県立音楽堂、邦楽ホール
桟敷席は2段ほども高くなっていて、特別感が味わえる。
石川県立音楽堂、邦楽ホールの桟敷席
石川県立音楽堂、邦楽ホールの桟敷席。二段ほど高くなっていて、見通しが良い。周りの壁は金沢独特の朱壁(しゅかべ)。ベンガラのつやっぽい色味。

野村萬斎さんは役者であり、演出家、根っからのエンターティナー

野村萬斎、金沢公演の番組表
野村萬斎、金沢公演の番組(パンフレット)

2021年10月30日(土)野村萬斎邦楽監督就任記念公演が開催されました。

 

記念公演では野村萬斎さん、息子の野村裕基さん、父親で人間国宝の野村万作さん、3世代の共演となりました。

豪華でした!

 

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人間国宝の野村万作氏 ※出典 BS日テレ『祈りのかたち  皇居外苑特別公演』

 

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野村裕基は野村萬斎の息子で狂言師

 

まずは新年やお祝い事に欠かせない能の演目『翁』の狂言の担当パーツである「三番叟(さんばそう)」です。

ここで野村萬斎さんの演出が光ります。

 

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『翁』を演じる観世清和氏 ※出典 BS日テレ『祈りのかたち 皇居外苑特別公演』

 

ふつう、「三番叟(さんばそう)」は、黒い翁(おきな)の面をつけて老人に扮し、一人で舞うのですが、

さすが野村萬斎さん、息子の野村裕基さんとのダブルの舞を披露してくれました。

演目は「三番叟 双之舞(さんばそう そうのまい)」

もちろん演目はオリジナル!

おめでたさ2倍といった感じです。

こういった予期せぬ演出は世阿弥がといた秘すれば花だと、感心しましたね〜

「秘すれば花」とは、簡単にいうと観客が予想もしていなかった演技をさりげなく見せることです。

 

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花

 

三番叟(さんばそう)では、力強く土を蹴ってジャンプする場面が何度もあります。

そのジャンプ力たるや!

すごいです。

跳ねています!

エネルギー全開といった感じです。

 

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翁とは、老いさらばえた老人ではなく高齢のめでたさと生命力をたたえるおめでたい意味があります。

見ているほうも元気になりおめでたさをおすそわけされた気分が味わえました。

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野村萬斎さんの演出は、金沢弁をまじえた愉快な笑い

野村萬斎、金沢公演のパンフレット
野村萬斎、金沢公演のパンフレット。親子3代揃い踏みで見応えがありました。

能村萬斎さんは、石川県立音楽堂邦楽監督ということで、演出にも携われたということでした。

2番めは、狂言「唐人相撲(とうじんずもう)」。

 

狂言「唐人相撲(とうじんずもう)」では、野村万作さんは唐(中国)の皇帝役でちゃめっけたっぷりの演技でした。

とても90歳とは思えない若々しさ、体の運び方で、エネルギッシュな演技に見入ってしまいました。

さすが若い頃から体幹を鍛える狂言で生きてこられておられるので、シャキシャキした身のこなしがすばらしかったです。

 

「唐人相撲(とうじんずもう)」は狂言では珍しく、数十人が出演するおおがかりな演目です。

衣装も異国情緒にあふれたカラフルなもので、狂言だから一つひとつの動作が大きくて、見ていて楽しい。

地元の演劇人や子どもたちも出演して笑いの絶えない楽しい舞台でした。

 

伝統芸能を現代風にアレンジした創作狂言とでもいいましょうか。

紗幕(しゃまく:演劇の舞台で使ううすい幕)ごしにシルエットが映し出されるしかけもあり、

いわゆる影絵ですね

広がりのある舞台でまた思いがけない演出も満喫できました。

 

さらにときどき、金沢弁を使ったセリフの言い回しもあり、地元の人たちから拍手と歓声が上がっていました。

見る人を喜ばせるサービス精神と、エンターティナーとしての自覚にプロ意識を感じましたねー。

 

テレビでの活躍でもいい意味で期待を裏切る演技が光りますが、舞台でも同じように期待を裏切ってくれました。

野村萬斎さんの活躍からますます目が離せません。

楽しくすてきな舞台をありがとうございました。

野村萬斎さんの舞台が終わったあとおみやげが!

野村萬斎金沢公演のおみやげ
野村萬斎金沢公演のおみやげ
野村萬斎、金沢公演のおみやげのおせんべい。
野村萬斎、金沢公演のおみやげのおせんべい。公演終了後に受付で配られた。萬斎さん手書きの縁起良い文言が。

 

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最後まで読んでくれはって、ほんまにおおきに〜〜ありがとうございます!